目標はこの事業が必要なくなること。テラサイクルがリサイクル事業に取り組む意義とは?

日本のリサイクル率は80%を超えると言われていますが、実はその半分以上はサーマルリサイクルといって、発電のエネルギーとして焼却されているのをご存知でしょうか。

リサイクル率が上がらない要因の1つに、リサイクルはコストがかかり、企業が取り組みづらいことが挙げられます。

そんな、従来取り組むにはハードルが高い「素材の回収からリサイクル」までを行うのが今回お話を伺ったテラサイクルジャパン。

リサイクルプラットフォームとしてテラサイクルが果たす役割と、将来の展望について話していただきました。

「将来はテラサイクルが必要なくなればいい」と語る、その真意は何なのでしょうか?

インタビューイー
エリック カワバタ
テラサイクル CEO
10 年以上サステナビリティの分野での豊富な経験を持つ。2013 年からテラサイクルで働き始め、2014 年 1 月にテラサイクル・ジャパンのジェネラル・マネジャーとして、アジアでの事業を正式に開始。2016 年にテラサイクルのアジア太平洋の統括責任者に就任。2016 年秋には中国に、2017 年秋には韓国にテラサイクルの現地法人を設立した。2019 年からは Loop のアジア太平洋統括責任者も兼務する。

 

経済合理性の中ではリサイクルできない

──テラサイクルというのはどういう事業なのでしょうか?

テラサイクルは「捨てるという概念を捨てる」を企業理念として、リサイクルプラットフォームを運営しています。

従来リサイクルをする経済合理性がなかったものを、テラサイクルのプログラムを通してリサイクルを可能にしています。

例えば、消費財メーカーから出る、本来なら廃棄物になるような容器を回収し、スポンサーシップによってリサイクルを可能にしています。
──リサイクルの経済合理性とはどういうことでしょうか?

リサイクルをするにはコストがかかるんです。

テラサイクルでは、元々はコストが掛かりすぎてリサイクルできなかったものをリサイクルしています。例えば、一般的にリサイクルが成立するためには以下のような図式が必要になります。
経済合理性の中でリサイクルができる場合
今の世の中でリサイクルできるかできないかは、この経済的な指標に依存しています。

極論を言えば、パソコンのすべての部品でさえもリサイクルをすることは可能なのですが、流通と加工が高くなりすぎてしまうため、現状はほとんどリサイクルされません。

これがリサイクルの経済合理性がないということです。

要は、リサイクルしたら手間がかかり、また損をするからリサイクルされないんです。

テラサイクルではそこにチャレンジしたいと考えています。

リサイクルする理由を作るということ

──どういうことでしょうか?

経済合理性がないところでリサイクルをしようとすると、最初はすごくコストがかかってしまいます。

それに、安定した回収量があり、そしてリサイクルした後にその材料を買ってくれるお客さんがいないと意味がないんです。

それができればバリューチェーンができることになりますが、それをスケールさせることで、経済合理性ができて、ようやく企業がリサイクルに取り組むことが可能になるんです。

ただ、現状ではそこに取り組むのには、時間と労力がかかりすぎてしまいます。

だからトライすらしません。

テラサイクルでは、今は経済合理性がないからリサイクルできないことにチャレンジして、少しずつでもバリューチーェンを作っていくことで経済合理性を持たせるためのプログラムを展開しているということです。
──テラサイクルが入ることで上記の図はどう変化しますか?

テラサイクルでは、企業からの支援を受けることで、右辺が大きくなり、元々経済合理性がないところに経済合理性を持たせることが可能になります。
テラサイクルが関わることの価値
──企業が支援するのはなぜなのでしょうか?

今は、消費者の環境意識も高まっているので、リサイクルプログラムに参加することで差別化になります。ブランドバリューが高まるという訳です。

本当はいいことをしたいのが一番いいのですが、リターンもあるので、支援するメリットがあります。

ゴミは存在しない

──もともとはアメリカで始まったテラサイクルですが、日本ではどのように始まったのでしょうか?

テラサイクルが始まってからすでにアジアでもリサイクルプログラムを展開しようと考えていました。

開始するにはスポンサー企業が必要で、そのために2013年より日本や韓国でいろんな企業に会っていました。

その中で最初に取り組みを始めたのが、アメリカで既にタバコの吸い殻のリサイクルプログラムのスポンサーをしていたナチュラルアメリカンスピリットの会社です。

ナチュラルアメリカンスピリットは、有機栽培のタバコ葉を使った製品を販売し、また日本でCSR活動として東日本大震災で移住を余儀なくされた農家を支援するSHARE THE LOVE for JAPANなどを展開しているたばこブランド。

当時の日本法人の社長からは「たばこは吸い終わるといつも捨てられてしまう。それを資源としてリサイクルに回すことで、製品サイクルの輪を閉じる試みをしたかった」と聞きます。

米国で展開していた吸い殻リサイクルプログラムを日本でも実施したいということで、テラサイクルジャパンの日本での最初のプログラムがスタートした運びになります。

──吸い殻も資源というのはあまり考えたことがなく、新鮮です。

そうですね。正直もっといろんなものをリサイクルすることは可能ですが、経済合理性がないがために対象から外されているのが現実なんです。

この吸い殻リサイクルプロジェクトでは、吸い殻のフィルターを紙タバコから選別して、別の再生樹脂と溶かして再生させ、クリアフォルダーや文房具や携帯灰皿を一緒に作りました。
テラサイクルのタバコの吸殻プログラム

──そんなことができるんですね。

よくびっくりされます(笑)

よく本当にできるの?と聞かれるので、全部のプロセスを見せるリサイクルツアーなどを行ったこともあります。

それを記者の方に取り上げていただいて、吸い殻でもこのようにリサイクルできる資源だと気付けるので、いろんなものがリサイクルできるのではないかとみなさんが考えるきっかけになりましたね。

全ては資源

──他にはどんなリサイクルプログラムを展開しているのでしょうか?

スポンサー企業が目指すことと回収物に合わせて、いろんなプログラムを行っています。

いくつか紹介できればと思います。

例えば、ライオン株式会社さんとは歯ブラシのリサイクルプログラムに取り組んでいます。
テラサイクルとライオンの共同プロジェクト
プラスチックごみ削減取り組みの一環で取り組んでいるハブラシ・リサイクルプログラムの『ポスターデザインコンテスト2019』の最優秀賞受賞作品

歯ブラシは1ヶ月に一度の頻度で取り替えるのがいいとのことですが、それで捨ててしまうと「もったいない」と考える方が多いかと思います。

──プラスチックでできていますしね。

そうですね。ただ、このプログラムを通せばリサイクルしているからもったいなくないということを伝えたいんです。そこで、回収した歯ブラシで植木鉢を作りました。

他にも、

  • スリーエム ジャパンとのキッチンスポンジ&コマンドタブのリサイクルプログラム
  • キールズやコーセー、資生堂などとの化粧品容器のリサイクルプログラム
  • 使用済みジップロックを傘に作り変えるリサイクルプログラム

なども行っています。

──本当になんでもリサイクルできるんですね!

そうですね。それが伝えたいメッセージでもありまして。

本当は回収した廃棄物でいろんなものが作れちゃうんだよ。だからゴミという概念はなくて、全て資源なんだよというのがテラサイクルからのメッセージです。

あとリサイクルを通じて全ては資源だと教えるのは、教育でも使えるコンテンツでもあると思っています。

なので、先ほどのライオンさんのプロジェクトだと学校でもリサイクルプログラムを展開して、リサイクルされるごとにテラサイクルポイントがたまる仕組みがあります。

貯まったポイントは寄付できるという仕組みです。

人々の意識が変わるきっかけに

──リサイクルが社会に与えるインパクトを教えてください。

1回使い捨てて終わりの世界ではなくて、資源を循環させることの重要性を伝えることだと考えています。

今の主流はリニアエコノミーと言って、採取して、加工して、使って捨てるの一方通行です。

それを、一回使って捨てて終わり、の世界ではなくサーキュラーエコノミーといって、新たな資源を使わない世の中にすることが社会的な意義だと思います。

リサイクルすれば資源は減らせるので。

現状、多くのものは焼却されて処分されていますが、テラサイクルを通せばリサイクルできるんです。

──そう考えるとリサイクルの意義は本当に高いですね。

そうですね。最近は海洋プラスチック問題が世間を騒がせていますが、テラサイクルでもNGOと一緒に海岸に打ち上げられたプラスチックを回収して、加工して再び製品に生まれ変わらせるStoried Materialsというプログラムを行っています。

テラサイクルが回収した海洋プラスチック

その活動は2017年の夏に、国連より気候変動分野で優れたプロジェクトを表彰する「Momentum for Change Lighthouse Activities」に選出されました。

これはフランスで行ったプロジェクトなのですが、このプロジェクトを通じてみんなが海洋漂着ゴミの問題を知るようになりました。

こうやって、人々の意識が変わることが本当に重要だと思っていて、Storied Materialsはその一助を担えたのかなと思います。

Storied Materialsのプロジェクトはその後、日本含め16ヵ国で展開しています。

テラサイクルが必要なくなることを目指して

──最後に将来の展望を教えてください。

これは常々言っていることですが、いずれはテラサイクルが必要なくなればいいなと考えています。

リサイクルが当たり前になって、各社が当然のように取り組んでいるから、テラサイクルがなくても回っている状態です。

テラサイクルがリサイクル回収プログラムをやる目的は、回収から製品にするまでのアウトプットを通じて解決方法を提供すること。

そもそもテラサイクル自体がソーシャルエンタープライズと言って、利益ではなく、社会課題解決のために存在しています。リサイクルされない社会課題がなくなれば、テラサイクルも役目を終えるのが理想です。

編集後記
今回は、リサイクルプラットフォーマーとしてリサイクルする経済合理性がない素材のリサイクルを行うテラサイクルのカワバタさんのインタビューをお届けしましたが、いかがでしたか。

リサイクルのプラットフォームのみならず、2021年からは循環型のショッピングプラットフォームのLOOPも手掛ける同社。今後の展開から目が離せません。

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それでは、最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

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ライター:Sohshi Yoshitaka
Ethical Choiceの初代編集長。2030年までに地球が持続可能になる土台を、ビジネスを通して作ることがミッション。

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