月日工作舎|在るものを生かし、暮らしを楽しむ。宮城県石巻市のアップサイクル家具屋。
本来は廃棄されるものを創造力で作品に変えてしまうアップサイクル。
アップサイクルにもいろんな種類がありますが、今回はアップサイクル家具を主に手掛ける月日工作舎の山内さんの活動に焦点を当てます。
アップサイクルの魅力と、アップサイクルを通じて伝えたいことに迫りました。
アップサイクル家具の月日工作舎
────まず、月日工作舎でどんな事業をされているのか教えていただけますか?
山内さん
月日工作舎では、アップサイクル家具の製造と販売を行っています。
また、家具だけではなく、古道具の販売も行いますし、オーダー家具の製作や店舗の内装工事の依頼も受けたりしています。
────結構幅広い活動をされてるんですね。主にアップサイクル家具を扱っているかと思うのですが、なぜ始めようと思ったのでしょうか?
山内さん
元々ハウスメーカーに務めていて、家具職人に転職しようとしたのが始まりでした。
家具職人になろうと決意した後に、大震災がありまして。それがあって地元に戻ろうと思ったんです。
家具職人になるために地元石巻市の職業訓練学校に通おうと思ったのですが、そのタイミングで父親が病気になってしまい、家業を手伝うことになりました。
それもあって、学校は辞退。3ヶ月ほど、手伝ったのちに、何をしようかと考えていたところ、知人の紹介でまちづくり団体に入ることになりました。
そこではリノベーションを通じて、空洞化した街に人を呼び込むプロジェクトを6ヶ月ほど行っていました。
その中で、工具の使い方などは覚えていきました。
ただ、自分がやりたいのは家具製作の方向で、どうしようか悩んでいたんです。といいますのも、訓練を受けていない自分が1から家具を作っていくのは難しいのが現実。
調べているうちにアップサイクルという概念に魅力を感じ、ハマって行きました。しかも、1からじゃなくて、元々あるものを使うので、これなら自分にもできると思ったんです。
2つのストーリーを楽しめること
────そこからアップサイクル家具に着手されたんですね。アップサイクルが魅力的だという話がありましたが、山内さんにとってアップサイクルの最大の魅力はなんでしょう?
山内さん
2つのストーリーが楽しめることだと思います。
アップサイクルされるモノって、元々は他の誰かが使っていたモノで、元々持っている味わいを感じることができます。
そして、後から手を加えられた、アップサイクルされた後は自分との歴史を一緒に紡ぐことになるじゃないですか。
その元ある物語と、これから作っていく物語の両方が楽しめるのは、アップサイクルならではだと感じています。
こだわりの作品たち。
────そう聞くと、アップサイクルってロマンが詰まっていていいですね!では、具体的な話に移りたいのですが、実際にどのような作品を作ってらっしゃいますでしょうか?
山内さん
3つほど紹介できればと思います。
まずは、こちらのダイニングテーブル。天板だけ、グリーンにペイントをしたモノです。
月日工作舎では、こういったペイントの作品に力を入れておりまして、その代表的な作品の1つです。先ほど言ったような、元々の歴史を感じてもらうために、わざと痕跡は残したままにしたり、エイジング加工をしたりしているのがお気に入りのポイントです。
────すごく味が出ていますね。ペイントに力を入れているとおっしゃってましたが、それは何ででしょう?
山内さん
月日工作舎の活動を通して、アップサイクルの認知や普及に取り組んでいきたいと考えているためです。
昨今ではDIYも流行ってはいますが、それでも必要な道具も多いですし、ゴミも発生してしまいます。加えて、モノを作るとなると音の問題もあったりと、環境的に難しい人は多いと思うんです。
ただ、ペイントであれば、必要な道具も少なければ、ゴミもあまり出ません。なので、導入しやすさという意味でも、ペイントはアップサイクルを知ってもらう入り口としてちょうどいいと考えています。
────そういう背景もあって、ペイントなんですね。すごく色の出方がきれいだと素人ながら感じたのですが、使用されているペイント自体にもこだわりがあるんでしょうか?
山内さん
おっしゃる通りで、こちらのペイントはイギリスのAnnie Sloan社のものを使用しています。
チョークペイントと言いまして、DIY向けの塗料として販売されているので、誰でも扱いやすいのが特徴です。
また、安全性が高いという特徴もありまして。
ペイントに使用されている有害物質が限りなく少なく、ペイントの完全硬化後は赤ちゃんが舐めてしまっても安全な「TOY SAFE」という認定をヨーロッパでは取得しています。
────なるほど、では2つ目を教えていただけますか?
山内さん
続いてはこちらの鏡を紹介いたします。
鏡自体はそのまま使用していて、枠を塗りました。
そして、鏡にある文字はタイポグラフィーを専門にしているアーティストの方にお願いをして、コラボ製作した作品になります。
このように他の技術を持った方との共同製作もアップサイクルをする上では楽しいところです。
────こちらも味がある作品ですね。ありがとうございます。では、最後の作品をお願いいたします。
山内さん
最後はこちらのアップサイクルコーヒーです。このコーヒーは私たちで製作したものではありませんが、店頭販売をしておりますので、ご紹介できればと思います。
私たち月日工作舎は、アップサイクルジャパンというアップサイクルの団体に加盟しているのですが、その本部の近くに焙煎場がありまして。
そこで扱っている焙煎機は業務用で、少ない豆の量だと回せず、どうしても中途半端な量の豆が余ってしまいます。
焙煎で余った豆を一部、ブレンドして焙煎しているのが、こちらのはみ出しブレンドというアップサイクルコーヒー。
世の中には様々な理由で廃棄されてしまう食べ物がありますが、このようにアップサイクルすることで価値を加えているところがお気に入りです。
ひと・モノ・地球にやさしい暮らしのきっかけに。
────どれもストーリーがあって素敵な作品ですね。ありがとうございます!アップサイクルは近頃、環境問題の文脈でも取り上げられると思うのですが、山内さんが環境問題に関連してアップサイクルで世の中に伝えたいことなどありますでしょうか?
山内さん
アップサイクルは精神的に無理なく楽しめる、環境に優しい取り組みだと思うんです。
環境面で考えれば、例えばものを捨てなかったり、既にあるものをリユースするのが一番いいと思うのですが、それは何かをしてはいけないという想いと常にセットになっています。
そうなると、環境には良くても、精神的には辛いものがありますよね。
ただ、アップサイクルなら新しい資源もエネルギーもあまり使わず、ものからあるものを自分好みにして、使い続けていくことができると思うんです。
アップサイクルはクリエイティブリユースと言われたりもしますが、その名の通り、創造性を以って、好きなものにアレンジして、そのアレンジしたものは好きだから大事に使う。
それによって、自然と環境に優しい暮らしができるのがアップサイクルなんです。
編集後記
アップサイクル家具を主に扱っている月日工作舎さんを紹介しましたが、いかがでしたか?
個人的には、2つのストーリーを楽しめるのがアップサイクルという考えがすごく好きで、共感するポイントでした。
今後は教育機関と連携したワークショップや福祉施設の取り組みも考えているという山内さん。今後の活動から目が離せません。
それでは最後まで読んでいただきありがとうございました。
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