【図解】太陽光発電の仕組みは?初心者にもわかりやすく解説
太陽光発電の仕組みを理解せずに導入するのはやめましょう。
太陽光発電は、太陽光パネルをはじめ複数の機器が接続したシステムです。
また、設備だけでなく費用対効果や補助金制度のように複雑な仕組みも存在します。
太陽光発電の設置費用は、決して安くないにもかかわらず、その仕組みを理解せずに導入すると後悔する可能性があります。
いま太陽光発電の導入を検討されている方は、当記事で太陽光発電の仕組みを理解してから設置しましょう。
目次
太陽光発電の基礎知識をわかりやすく解説
太陽光発電の仕組みを解説する前に周辺知識を含めた基礎知識を解説します。
エネルギーについて
エネルギーとは、物を動かしたり、光や熱を作り出したりする力のことです。私たちの生活にとってとても重要で、電気、ガス、石油などの形で毎日使っています。エネルギーには2つの種類があり、再生可能エネルギーと非再生可能エネルギーに分けられます。再生可能エネルギーには太陽光や風力、水力などがあり、自然の力を使ってずっと使い続けられるので、地球に優しいという特徴があります。
太陽光の働き
太陽光は、太陽から届く光のエネルギーのことです。太陽光は地球の生き物にとって欠かせないもので、植物が成長するための光合成を助けたり、地球の気温を調節したりしています。また、太陽光は再生可能エネルギーの一つであり、太陽光発電を使って電気を作ることができます。太陽光は無限に使えるクリーンなエネルギーとして、環境に優しいエネルギーの代表として注目されています。
電力・電力量の定義
電力とは、電気を使う速さを表すもので、「ワット(W)」という単位で表します。一方、電力量は、ある時間内にどれだけの電気を使ったかを表すもので、「キロワット時(kWh)」という単位を使います。電力は一瞬の電気の使い方を表し、電力量はたまっていく電気の使い方を表しています。電気代を計算する時には、この電力量が使われます。これらの考え方は、太陽光発電の効果を正確に知るためにも大切です。
太陽光発電とは
太陽光発電は、太陽の光を使って電気を作る方法です。これは、ソーラーパネルと呼ばれる板を使って行われます。ソーラーパネルはシリコンという物質でできていて、太陽の光を受けると電気が生まれる仕組みになっています。
この電気は最初は「直流(DC)」という種類ですが、家庭で使うには「交流(AC)」に変える必要があります。そのため、インバーターという機械を使って直流を交流に変え、家の中で使えるようにします。
太陽光発電は環境に優しく、二酸化炭素などの有害なガスを出しません。そのため、地球温暖化を防ぐための方法としても注目されています。また、どこにでも設置でき、地域に合わせて効率的に電気を作ることができます。
この仕組みを理解することで、私たちがどのようにして自然に優しいエネルギーを使い、地球環境を守る手助けができるかを学べます。
太陽光発電の仕組みをわかりやすく図で解説
上図は、太陽光発電で電気を生み出す仕組みを図解したものです。
太陽光発電の中心となるのは、屋根に取り付ける太陽電池パネルです。太陽電池パネルは、「p型」と呼ばれるプラスの電気を帯びやすい半導体と、「n型」と呼ばれるマイナスの電気を帯びやすい半導体で作られています。
太陽光パネルに太陽光が当たると、半導体の中にある電子がp型とn型の境目を越えてn型側に移動します。この状態で導線につなぐと、電子が導線を伝わり、電気が流れ出すのです。
このように、太陽光発電で電気を生み出す仕組みは、意外とシンプルな原理で作られています。続いては、太陽光発電で生み出した電気を、家庭の電気として使う仕組みを解説します。
発電した電気が家庭内に流れる仕組み
上図は、太陽光発電の電気が家庭内に流れる仕組みを図解したものです。
太陽光発電の電気を家庭内で使うには、以下の設備を設置する必要があります。
機器 | 役割 |
---|---|
太陽光パネル | 太陽光を電力に変換する装置 |
接続箱 | 太陽光パネルからの配線をまとめて パワーコンディショナに送る |
パワー コンディショナ |
太陽光パネルで発電した直流電力を 家庭で利用可能な交流電力に変換する |
分電盤 | 家の配線に電気を分ける |
電力量計 | 電力会社に売買した電力を測定する |
蓄電池 | 発電した電力を貯める。 発電時間外に貯めていた電力を供給する。 |
発電量モニタ | 発電量や消費電力量などを表示する |
上記の設備を自宅に設置することで、自宅の照明や家電で太陽光発電の電気が使えるようになります。
必要に応じて蓄電池や電気自動車(EV)を設置すれば、太陽光発電の余剰電力が充電できるので、夜間や発電量が低い日でも充電した電気を使用できます。
また、自家消費で余った電気を電力会社に売電することも可能です。次章では、仕組みを踏まえ、太陽光発電のメリット・デメリットを紹介します。
太陽光発電の仕組みからわかったメリット・デメリット
太陽光発電の仕組みからわかったメリット・デメリットは以下のとおりです。
太陽光発電のメリット
太陽光発電のデメリット
メリット①家計を節約できる
太陽光発電を導入する最大のメリットは、家計の負担を長期的に節約できることです。太陽光発電の電気を自家消費すれば、電力会社から購入する電力量を減らせます。また、余った電気を売電することで売電収入も得られます。
太陽光発電を導入するには設置費用が必要であるものの、長期的に見れば削減した電気代や売電収入で設置費用を全額回収することも可能です。
「最近の電気料金は高騰気味だから、電気代による家計の負担を減らしたい」という方は、太陽光発電を導入するのがおすすめです。
メリット②停電時の電力を確保できる
太陽光発電は家計の節約だけでなく、緊急時の電力供給源としても役立ちます。地震や台風などの災害で通常の電気が止まっても、太陽光発電システムに損傷がなければ、発電できた分だけ電気を使うことが可能です。
また、太陽光発電だけでなく蓄電池も設置すれば、発電量が減る夜間や曇り・雨の日でも電力を供給することが可能です。
2018年に発生した北海道胆振東部地震では、現地の電力会社が管理している全地域が停電する「ブラックアウト」が起きたものの、太陽光発電と蓄電池を備えた家庭は安定して電気を使用できたことが報告されています(※)。
※:ITmedia「北海道地震による大停電、85%の住宅太陽光ユーザーが自立運転を活用」
このように、太陽光発電は単なる省エネ設備ではなく、災害時の重要な電力源としても機能するのです。どんな時でも電気が使える環境を整えたい方は、太陽光発電は必須の設備と言えるでしょう。
メリット③再生可能エネルギーなので環境に寄与できる
太陽光発電は太陽光による再生可能エネルギーを活用するため、発電による地球環境への負担を抑えられます。太陽光発電は発電時に二酸化炭素を排出しないのはもちろん、燃料の採掘や輸送による環境への影響もありません。
例えば、容量3kWの太陽光発電を導入すると、年間約2トンのCO2排出量を削減可能です。約2トンのCO2排出量は、1世帯平均CO2排出量の約40%に相当します(※)。
※:クール・ネット東京「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」
つまり、太陽光発電は個人レベルで環境保護に取り組める手段の1つとも言えるでしょう。
続いて、太陽光発電の導入によるデメリットを解説します。
デメリット①発電量は天候や立地に左右される
太陽光発電の発電量は、天候や立地条件によって大きく変動します。昼間の天気が曇りや雨だと発電量は低下し、夜間の発電量はほとんどありません。太陽光の日射に対して太陽光パネルの方角や角度がずれていたり、周囲の建物や樹木による日陰があったりしても発電量は低下します。
年間の日照時間が多い地域と少ない地域では、同じ容量の太陽光発電でも年間発電量に大きな差が生じます(※)。特に積雪地域では、雪が太陽光パネルを覆ってしまうため、除雪作業をしないと発電量はほとんどありません。
※:NEDO「MONSOLA-11」の年間日照量データから算出
昼間の発電量が足りなければ、電力会社からその分の電気を購入する必要があります。そのため、太陽光発電の導入を検討するには、事前に自宅の立地条件や気象データを確認しておくのがおすすめです。
デメリット②保証内容がメーカー・業者によって変わる
太陽光発電に必要な設備の保証内容は、メーカーや施工業者によって大きく異なります。一般的に、太陽光パネルの出力保証は15年、パワーコンディショナの製品保証は10年が目安です。ただ、メーカーによっては、より長い保証期間を設けている場合があります。
例えば、Panasonicの太陽光パネルの出力保証は25年と、一般的な保証期間より10年も長くなっています(※)。
※:Panasonic「パナソニックの太陽光発電システムは業界トップクラスの保証」
また、太陽光発電の施工に関する保証内容も、設置する設備内容や自宅の状態(新築・既築)によって変動します。
太陽光発電の保証内容の違いは、発電量の維持や維持費用に影響を与えます。太陽光発電の導入を決めたら、メーカーや施工業者の保証内容も確認しましょう。
デメリット③設備の維持費用が必要になる
太陽光発電を導入するには、設置費用だけでなく以下の維持費用も考える必要があります。太陽光発電の主な維持費用
- 設備の点検費
- 太陽光パネルの清掃費
- 太陽光パネルやパワーコンディショナの交換費
- 保険料
一般的に、設備点検は4年に1回、太陽光パネルやパワーコンディショナの交換は15年から20年に1回おこなわれます。
維持費用の支払いを怠ると、太陽光発電の発電量が通常より早く低下し、設備が故障する可能性も高くなります。設備が故障すると修理費や設備の交換費が発生するため、場合によっては維持費用よりも高い出費になる可能性があります。
そのため、太陽光発電の維持費用は、発電量の低下や余計な出費をおさえる重要な費用です。長期的な費用対効果を把握するためにも、設置費用だけでなく維持費用も踏まえて太陽光発電の導入を検討しましょう。
以上、太陽光発電の仕組みからわかったメリットとデメリットを解説しました。メリットとデメリットを十分に理解しておけば、太陽光発電の導入を適切に検討できるでしょう。
費用を節約して導入するポイントはこちら
太陽光発電の国内普及率は年々上がっている
日本における太陽光発電の普及率は年々上昇しており、持続可能なエネルギー源として浸透しつつあります。
国内における太陽光発電の電力量の割合は2012年では約2%だったものの、2022年には約10%まで上昇しており、電力量自体は約90TWhに達しています(※1)。
※1:環境エネルギー政策研究所「2022年の自然エネルギー電力の割合」
この電力量は、家庭の平均年間電力消費量が約4,200kWh(※2)だとすると、約2,143万世帯の年間電力消費量をまかなえる規模です。
計算式:90TWh ÷ 4,200kWh/世帯 ≒ 2,143万世帯
※2:環境省「家庭でのエネルギー消費量について」
また、各国の太陽光発電の普及率を下表にまとめました。
項目 | 総発電量に対する太陽光発電が占める比率 |
---|---|
日本 | 8.3% |
ドイツ | 8.5% |
イギリス | 4.0% |
中国 | 4.0% |
フランス | 2.7% |
スペイン | 8.0% |
インド | 4.4% |
アメリカ | 3.4% |
資料では、各国の年数を統一するために、2020年時点の数値を掲載しています。
このように、日本における太陽光発電の普及率は、海外と比較しても高い水準にあることがわかります。
年間発電量から経済的メリットをシミュレーション
普及率が増加しているなかで、実際にどのくらい安くなるのでしょうか。
本章では、太陽光発電を導入した場合の電気代をシミュレーションします。
想定パターン
- 3人家族
- 月の電気使用量:350kWh(1日の電気使用量:11.3kWh)
- 月の電気代:11,000円(基本料:1,100円)
実質電気代 ※売電収入を含めた電気代 |
総電気代 | 売電収入 |
---|---|---|
5,728円 | 7,882円 | 2,154円 |
各条件により削減率は変動しますが、一般的に太陽光パネルのみの設置で1~2割、蓄電池の併用で6~7割ほど月々の電気代が削減可能です。
将来的な電気代の高騰などを加味し、早めに太陽光発電の導入を検討すると良いでしょう。
設置費用と維持費用の価格相場は?
ここからは、太陽光発電の設置費用と維持費用の価格相場を解説します。必要な費用と得られる経済的メリットが釣り合っているか、ぜひ確認してみてください。
設置費用の価格相場は28.4万円/kW
資源エネルギー庁によると、家庭用太陽光発電の価格相場は1kWあたり28.4万円となっています(※)。※:資源エネルギー庁「太陽光発電について P-37」
一般的に家庭用の太陽光パネルは3~5kWになるので、仮に容量5kWの太陽光発電を導入した場合、設置費用は144万円(28.8万円/kW × 5kW)です。
太陽光発電の設置費用の内訳は、設備費と工事費に大きく分けられ、それぞれの割合は設備費用が75%で工事費が25%となります。
出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について」
特に太陽光パネルは、設置費用全体の半分以上も占めています。発電容量を増やすと購入する太陽光パネルの枚数が増えるので、設置費用の価格相場を変える主な要因と言えます。
そのため、導入する太陽光パネルの容量によっては、太陽光発電の設置費用は大きく変動することを理解しておきましょう。
維持費用の価格相場は年間5,800円/kW
太陽光発電でかかる費用は、設置費用だけでなく維持費も含まれます。資源エネルギー庁によると、容量1kWあたりの年間平均維持費は5,800円と想定されています。(※)※出典:資源エネルギー庁「太陽光発電について P-39」
維持費用の内訳は、主に太陽光パネルの清掃代と設備のメンテナンス代が含まれます。太陽光パネルの清掃は1~2年に1回おこなうのが一般的です。一方で、定期点検は4年に一度の実施が義務化されています。
太陽光パネルの清掃を怠ると、太陽光パネルに汚れがたまって発電量が低下する恐れがあります。周辺設備も定期的にメンテナンスしないと、故障が起きる可能性が高くなり、維持費用よりも高い修理費・交換費が発生するかもしれません。
そのため、太陽光発電を導入したいなら、設置費用だけでなく維持費用も含めて検討しましょう。
費用を節約して住宅用太陽光発電を導入するコツ・ポイント
さきほど、太陽光発電の初期費用と維持費用の価格相場を解説しましたが、費用はできるだけ安くしたいですよね。
太陽光発電の費用を節約する方法は、以下の3つが挙げられます。
太陽光発電の費用を節約するコツ・ポイント
それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
太陽光発電の補助金制度を利用する
太陽光発電を導入する際は、政府やお住まいの自治体が実施している補助金制度を活用しましょう。補助金制度を利用すれば、太陽光発電の設置費用をやすくすることが可能です。例えば、東京都で実施されている「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」では、下表のように太陽光パネルの容量に応じた補助金が受け取れます。
太陽光発電システムの発電出力 | 設置する住宅の種別 | 発電出力に乗じる額 | 上限額 |
---|---|---|---|
3.6kW以下 | オール電化の住宅 | 130,000円/kW | 390,000円 |
3.6kW以下 | オール電化以外の住宅 | 120,000円/kW | 360,000円 |
3.6kW超50kW未満 | オール電化の住宅 | 110,000円/kW | 上限額なし |
3.6kW超50kW未満 | オール電化以外の住宅 | 100,000円/kW | 上限額なし |
また、条件によっては政府と自治体の補助金制度を併用することも可能です。そのため、太陽光発電を導入する際は、政府と自治体それぞれの補助金制度を確認しておきましょう。
蓄電池を導入するなら太陽光発電と同時に導入する
もし蓄電池・EVの導入を検討しているなら、太陽光発電と同時に導入するのがおすすめです。太陽光発電と蓄電池を別々に導入すると、工事費が2回発生してしまいます。同時に設置すれば工事費は1回で済むため、別々に導入するよりも工事費を節約することが可能です。
また、補助金制度によっては、太陽光発電と蓄電池を同時に導入すると補助金が上乗せされる場合があります。
したがって、蓄電池は太陽光発電と同時に設置する方が、総額費用を節約できる可能性が高くなります。
施工実績が豊富な業者に依頼する
施工実績が豊富な業者に依頼することも、太陽光発電の費用を節約する方法として挙げられます。工事費用の安さだけで施工業者を選んでしまうと、品質が低い工事により故障する可能性が高くなります。設置費用を削減できたとしても修理費やメンテナンス費用が重なって、結果的に総額費用が高くなるかもしれません。
施工実績が豊富な施工業者であれば、故障の頻度が下がり維持費用を節約できるでしょう。
また、工事だけでなくメンテナンスの品質も高ければ、太陽光発電システムの各設備の寿命が伸びて、設置費用に対する費用対効果も上がります。
つまり、施工実績が豊富な業者に依頼することは、長期的な維持費用を節約するだけでなく、太陽光発電に対する満足度の向上にもつながる可能性があります。
そのため、太陽光発電の総額費用を節約するなら、施工実績が豊富で工事の品質が高い施工会社に依頼しましょう。
まとめ
当記事では、太陽光発電における発電の仕組みや家庭内で利用する仕組み、売電の仕組みを解説しました。太陽光発電には多くのメリットがありますが、その仕組みをある程度理解したうえで設置するようにしましょう。
実際に導入する場合は、設置費用だけでなく総額費用や費用対効果を加味した総額で検討する必要があります。
価格については以下の記事で紹介しています。太陽光発電の導入を検討されている人はご覧ください。