グロースハックとは何か?本場アメリカにおける定義と事例

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グロースハックとは何か?本場アメリカにおける定義と事例

私たちEXIDEAは【世界に革新を与えるグロースハッカー集団】を目指している会社です。アメリカではすでに「グロースハック」や「グロースハッカー」という言葉が広く流通していますが、日本では言葉の定義や意味がまだまだ浸透していない印象もあります。

実際、2010年にアメリカで生まれたばかりの言葉「グロースハック」にはまだ明確な定義が無く、その意味合いはさまざまな人によってさまざまな表現で語られているのが現状。ただし、グロースハックと呼ばれる仕事を一言で言えば「最短時間で圧倒的な売上を創出する」こと。つまり、グロースハッカーとは最短時間で圧倒的な事業成長を会社にもたらすことができる人との意味合いで使われることが多い様子。

そこでこのページでは、本場アメリカにおけるグロースハックの定義や代表的なグロースハック事例、またグロースハックを専門とするグロースハッカーの仕事や求められる資質など幅広く解説・紹介します。

青木綾青木 綾(RYO AOKI)


EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。

2010年にショーン・エリス氏が生み出した言葉「グロースハック」

「グロースハック」という言葉が初めて世の中に出たのは2010年、ショーン・エリス氏のブログ記事「Find a Growth Hacker for Your Startup」で使われたのが始まりです。(意訳すると“スタートアップには必ずグロースハッカーが必要”といった内容の記事)

このショーン・エリス氏自身も有名なグロースハッカーで、アメリカでは“グロースハックの生みの親”として知られています。オンラインストレージサービス「Dropbox」のマーケティング責任者を務めた後、アメリカのスタートアップ企業でマーケティングに携わる中で、自分と同様にグロースハックを遂行できる人材が必要となりました。ところが、なかなかそのようなグロースハック人材を採用できなかったそうです。

それはグロースハッカーと従来のマーケティング人材とで、求められる素養や資質が異なるためでした。

エリス氏の定義による従来のマーケティング人材とグロースハッカーの違い

優秀な従来型のマーケティング人材が持つ「マーケティング戦略の立案」や「マーケティングチームの構築」「外部ベンダーのマネジメント」という能力は、特に立ち上げ初期のスタートアップ会社の「成長」(=グロース)には直接役立たないとショーン・エリス氏は考えます。

むしろ成長にのみこだわり、自分の担う仕事のすべてを会社・事業の持続的で(sustainable)拡大可能な(scalable)成長に結び付けられるような人材、すなわち「グロースハッカー」がスタートアップ企業には必要と考えました。

従来のマーケティング人材 ショーン・エリス氏の定義するグロースハック人材
マーケティングにかかわる幅広い知識やスキル
・優れたマーケティング戦略を立案できる
・マーケティングチームを構築・マネジメントできる
・外部のベンダーと良好な関係を構築できる
成長にこだわるスタンス・能力
・会社や事業の成長に深くコミットできる
・成長のためにいくつものアイデアを創造できる
・仮説を検証する手法や具現化する方法に精通している

会社や事業が軌道に乗って規模が拡大すれば優秀な従来型のマーケティング人材も必要となりますが、スタートアップ企業にとってはまずそのフェーズに至ることが必要。それには「グロースハック」という考え方が必要と初めて語ったのが、グロースハックの第一人者であるショーン・エリス氏なのです。

アメリカの有名・著名なグロースハッカー

ショーン・エリス氏をはじめ、アメリカには有名・著名なグロースハッカーが多数います。みなさんもよくご存知のFacebookやTwitter、Airbnb、Uberなど、短期間で圧倒的な急成長を実現している会社には、必ずグロースハックと呼ぶべき仕事や成果があると言われています。

Sean Ellis(ショーン・エリス)氏

グロースハッカーズカンファレンス元Dropboxのマーケティング責任者、マーケティングツールを提供するQualarooのCEOを経て、現在はグロースハッカーズ・カンファレンスなどを主宰する「GrowthHackers.com」のCEO。Dropboxに「友人・知人を招待するとストレージを◯GBプレゼント」といったインセンティブ機能を導入、同社の会員基盤を急成長させたことで有名。

Ryan Holiday(ライアン・ホリデー)氏

グロースハッカーマーケティングアメリカンアパレルのマーケティング責任者を務めた後、自身が立ち上げた会社でティム・フェリスやタッカー・マックスなどアメリカの著名な作家のマーケティング活動・メディア戦略立案に従事。その戦略は、TwitterやYoutube、Googleでケーススタディとして取り上げられるほど優れたものと評価されています。「Growth Hacker Marketing」(邦題:グロースハッカー)の著者としても有名です。

Aaron Ginn(アーロン・ジーン)氏

ABテスト2012年のアメリカ大統領選挙で共和党のミット・ロムニー陣営が採用したグロースハッカー。ABテストやWebページデザインの変更によって、短期間で1億8000万ドルもの献金を集めたことがニュースになり、グロースハッカーの存在が世の中でよく知られるきっかけにもなりました。

Andrew Chen(アンドリュー・チェン)氏

アンドリュー・チェンUberのライダー(乗客)グロースチームの元責任者で、現在はシリコンバレーでスタートアップ企業の投資家・アドバイザー。ブロガーとしても有名で、「Growth Hacker is the new VP Marketing」(グロースハッカーは新しい形のマーケティング担当副社長である)という記事はグロースハッカーの定義を語る上で欠かせない記事です。

グロースハックとは「最短時間での圧倒的な事業成長」である

「グロースハックとは何か?」という定義にはいろいろな表現がありますが、以下の2点に要約することができそうです。

  • 最短時間で会社・事業の成長(=売上・利益の最大化)を確実に実現すること。
  • かつ、その成長は一時的なものではなく持続可能かつ拡大可能な“仕組み”で実現されていること。

グロースハックは予算や人員の限られたスタートアップでも実行可能な手法ですから、膨大な予算をつぎ込む従来型のマーケティング手法とは異なり、最小コスト(人・モノ・カネ)で最大売上を実現するアイデア・仕組み(≒ハック)を創り出す、ことはグロースハックの前提条件です。

グロースハックとは「マーケティングの進化形」という考え方

“グロースハックは既存のマーケティングに反するものではない”というのはショーン・エリス氏の言葉。むしろグロースハッカーも、認知向上やブランディングなど従来のマーケティング手法も理解しておく必要があります。ただし従来のマーケティング領域に限らず、短時間で成長を実現できるドライバーがあれば積極的に(それが製品開発だろうと営業戦略だろうと)関与していくのがグロースハックの考え方でありスタンス。

グロースハックとは、「マーケティング領域の定義・解釈を拡大した進化形」という考え方ができそうです。

グロースハックの実践に必要なのはデータと創造力と探究心

アーロン・ジーン氏はグロースハックについての記事の中で、グロースハックの実践に必要なのは“データと想像力と探究心”だと述べています。

This mindset of data, creativity, and curiosity allows a growth hacker to accomplish the feet of growing a user base into the millions.

(https://techcrunch.com/2012/09/02/defining-a-growth-hacker-three-common-characteristics/より引用)

グロースハックの実践には科学的なアプローチが必要で数字で検証・分析可能な手法を用いてこそ、短時間のうちに確実に成長を実現できると氏は言っています。つまりグロースハックにはデータ(data)の分析や解析能力が重要です。

一方、成長につながる新たな仕組みを考え付くには、ひらめきに似た想像力(Creativity)も必要です。「持続的で拡大可能な成長アイデア」は初めから思いつくものではなく、いくつもの成長仮説を出し、1つ1つ丁寧に定量的な検証を重ねることで初めて見えてくるもの。この仕事こそグロースハックの仕事であり、グロースハッカーは右脳も左脳もフルに使わなければならないと氏は伝えています。

最後に必要なのが探究心(Curiosity)。「なぜユーザーは自分のプロダクト・サービスを選んでくれたのだろうか?」「なぜあのサービスは急成長しているのだろうか?」など、常に探究心・好奇心をもって“なぜ?”を繰り返し、絶えず次の改善や成長を追い求めるのがグロースハックの仕事です。

グロースハックとは計測可能で、追跡可能で、拡大可能なもの

従来のマーケティングにありがちな「ブランディング」や「マインドシェアの拡大」といった漠然とした目的ではなく、数字で置き換え可能な(ユーザー数やリピート率などの)明確な指標を猛然と追いかけ続けるのがグロースハックの仕事とライアン・ホリデー氏は言っています。

グロースハックには計測可能(testable)で、追跡可能(trackable)な目標設定と、“その数値を必ず押し上げる!”という絶えない情熱が必要だということです。この点はアーロン・ジーン氏の言う“データ”と近い意味合いを感じます。

さらにグロースハックによる成果は拡大可能(scarable)で、バイラルにその商品やサービスが広がっていく状態、つまり勝手に、自己増殖的に成長が持続される状態が理想とされています。アーロン・ジーン氏の言葉を借りれば“グロースハックの最終成果は、サービスそのものが何百万人ものユーザーを獲得し続ける半永久的なマーケティングマシンを創り出すこと”。そして、このスケーラビリティやバイラリティは偶然起きるものではなく、きちんと設計することで自ら創り出せるものだとライアン・ホリデー氏は言っています。

FacebookやDropbox、Twitter、Airbnbなどの会社は、従来のマーケティング手法でありがちなプレスリリースやPR会社を使った広告宣伝などをほとんど行わずに成長を実現しました。その裏にはこのようなグロースハックの考え方があったのです。

グロースハッカーとはマーケターとコーダー(エンジニア)のハイブリッド

この定義はアンドリュー・チェン氏の言葉で、「どうやって“現状の”プロダクトに顧客を集めるか」というマーケティング的視点と、「ここをこう変えたら集まるかも知れない」というプロダクトそのものの改善・改良を考える視点(コーディングやエンジニアリング的な視点)の両方がグロースハッカーには必要、と氏は述べています。(英語の原文はこちら

製品・サービスなどのプロダクトを短期間で変更できないことを前提にした従来型のマーケティング的発想ではなく、オンラインサービスにおいてはA/Bテストやランディングページの最適化(LPO)、コンバージョン最適化(CRO)、検索エンジン最適化(SEO)によるプロダクト自体の改善・改良を常に実施することが可能です。

常に改善・グロースハックが可能であることを前提に、日々サービスの改善点や改良点を仮説立て、短期間でテストや検証を実行し、事業成長に最も効果的な打ち手を最速で見つけるにはコーダー・エンジニアとしてのスキルも求められるのです。

このためグロースハックに必要なのはエンジニア志向のマーケターであり、マーケティング志向のエンジニアでもあり、マーケティングとエンジニアリングの両方の素養を兼ね備えたグロースハッカーなのです。両方の視点から高速でプロダクトを改善できるからこそ、最短時間での事業成長(=グロースハック)が可能になるということをアンドリュー・チェン氏は伝えています。

具体的なグロースハック施策(サイト改善や顧客獲得)の事例

最後に「グロースハックとは何か?」についての理解がさらに深まるよう、運用するWEBサイトやサービスの改善、新規の顧客・ユーザー獲得など、アメリカでの具体的なグロースハック施策の事例を紹介します。

紹介・招待マーケティングによるグロースハック事例(Dropbox)

dropboxのロゴオンラインストレージサービス「Dropbox」は、いまや年間売上10億ドル、ユーザー数5億人以上の巨大サービス。Dropboxのサービスが開始されたのは2008年、およそ10年で急成長を実現した背景にあるのが、紹介マーケティングによるグロースハック事例です。

2008年9月、サービス開始直後の会員数は10万人。それがわずか15ヶ月後の2009年12月には40倍の400万人にDropboxの会員数は拡大しました。この急成長に大きく貢献したグロースハック施策の1つが紹介・インセンティブプログラム。「友人・知人をDropboxに招待すると追加ストレージ2GBを無料でプレゼント」とい招待うプログラムはバイラルに拡散し、従来型の広告宣伝に膨大な予算をかけること無く、数百万人の会員を獲得するグロースハックに成功しました。

このような紹介や招待によるインセンティブプログラムは、AirbnbやUberなど近年急成長中のサービスでも採用されているグロースハック手法です。(より詳しい解説は、「紹介マーケティングによるグロースハック~DROPBOX、AIRBNB、UBERなどの事例~」でまとめています。)

アメリカ大統領選挙でのABテストツールを活用したグロースハック事例

オバマ・アメリカ合衆国大統領2012年のアメリカ大統領選挙では共和党陣営にグロースハッカーであるアーロン・ジーン氏がかかわっていましたが、2008年の選挙で当選したオバマ元大統領の陣営でもグロースハックが行われていたことが知られています。

アメリカ大統領選挙では、候補者が自身の考えをE-mailで配信するニュースレターの購読者を増やしたり、自身に献金してくれる人を多数集めることが重要で、このプロセスでもWEBが最大限活用されています。また大統領候補陣営は献金獲得などの効果を最大化するため、多数のグロースハッカーを採用しています。

2008年の大統領選挙におけるオバマ氏のキャンペーンではE-mail登録率を改善するために24パターンのABテストが実施され、オリジナルのパターンに対して登録率が40%改善するパターンが見つかりました。その結果、寄付金額に換算すると6,000万ドル相当(60億円以上)の改善効果が実現されたと言われています。

重要なのはデータの分析・解析スキルと、質の高い仮説・テストの設計

この大統領選挙におけるグロースハック事例は、グロースハックツールを活用して検証可能なデータを取得・分析、改善テスト・ABテストを繰り返し実施することで、短期間で圧倒的な成長を実現したグロースハックの好事例として知られていますが、何より重要なのはデータの分析・解析スキルと考えられます。

十分なデータの取得や分析・解析が行えなければ、質の高い仮説を設定したり、有効なABテストを設計することができず、どれだけABテストを繰り返してもグロースハックの実現は難しくなります。高いデータ分析・解析スキルがあって初めてユーザのインサイトを理解でき、グロースハックを期待できるABテストのシナリオが設計できるのです。

日本よりも選挙運動のWEB化が進むアメリカ。特にマーケティング規模の大きいアメリカ大統領選挙は先進的なWEBマーケティング事例、グロースハック事例の宝庫です。詳しくは、「メールマーケティングによるグロースハック~手法やツール・Hotmailの事例など~」や「ABテストツールによるグロースハック~OptimizelyとVWOの事例~」でも紹介しています。

プラットフォームサービスを利用したグロースハック事例

特にスタートアップ企業や新規のサービスにとって、ユーザーや顧客をどう集客するか、自社サービスの認知を高めるにはどうしたら良いかという点は、常に共通の課題であり、重要なテーマです。この課題に対して、既存のプラットフォームを利用する方法でグロースハックを実現した企業がいくつかあります。
 
現在では世界中で利用されているオンライン決済サービス・Paypalですが、当然Paypalもサービス開始直後は認知度も低く、アカウントも少ない状態でした。このPaypalを急成長させたグロースハックの1つが、同じく当時急成長だったアメリカのECモール・eBayへのサービス統合。オンラインショッピングサイトとしてユーザー数を増やつつあったeBayのオンライン決済手法の1つとしてPaypalが加わることで、瞬く間にPaypalの認知度が高まりました。

同様にAirbnbやSpotifyなどのサービスも、それぞれCraigslistやFacebookといった多数のユーザーが集まるプラットフォームサービスの力を活用し、グロースハックを実現しています。詳しいは、「プラットフォームへの統合戦略によるグロースハック~PaypalやSpotifyの事例~」も併せてご覧ください。

 
いかがでしたでしょうか?

この記事がグロースハックという言葉の理解に、少しでも役に立っていれば幸いです。
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