Author:newexidea

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コンテンツ作成方法~ジャーナリストに学ぶ、信頼される書き方

ユーザーに支持されるコンテンツ、つまりターゲットとするオーディエンス・顧客を集め、最終目的である成果・売上の最大化に貢献するようなコンテンツは、どのような方法・書き方で作成すれば良いのでしょうか?   いまアメリカでは、トラディショナルな手法(新聞・雑誌などのジャーナリストや、映画・小説におけるストーリーテリングの手法など)からあらためて学びを得て、WEBコンテンツの作成に活用しようという動きが活発化しています。   別記事「コンテンツマーケティングの最新トレンド」で紹介している通り、今後、WEBページやブログ記事、動画などの作成や書き方で求められるのは「TRUTH(信頼感)」や「TENSION(テンション・緊張感)」。   良いコンテンツとは ・読み手から信頼されるコンテンツ ・読み手のテンションを上げ、ドキドキ、ワクワクさせるようなコンテンツ と定義されそうです。では、どのような方法・書き方でコンテンツを作成すれば、そのような内容になるのでしょうか? このページでは、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2018」の中で取り上げられていた“コンテンツ作成方法・書き方”に関連するトピックスのほか、新聞や雑誌などのジャーナリストのテクニック・手法も紹介します。 ※コンテンツマーケティングや「Content Marketing World 2018」の概要は、「コンテンツマーケティングの定義と考え方~2018年の最新トレンド~」も併せてご覧ください。 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 コンテンツ作成の準備や手順~WEBページやブログ記事の場合~ コンテンツ作成やマーケティング施策の企画などでも重要な「5W1H」の考え方、 Who:誰に What:何を When:いつ Where:どこで Why:なぜ How:どのように というフレームワークですが、中でもWEBページやブログ記事などのコンテンツ作成で欠かせないのが「Who」「What」「How」の3つ設計。この3つに加えて、WEBページやブログ記事を読み終えた後の「読後感」を作成前の準備段階で設定することが、良いコンテンツを作成する上で欠かせない準備であり、必要な手順です。 またこの設計や手順は、BtoCのコンテンツ作成に限らず、BtoBビジネスの会社ホームページなどを作成する上でも共通の考え方。手順を1つずつ解説していきます。 Who:ターゲットオーディエンス(ペルソナ)の設定が必要 WEBページやブログ記事に限らず動画や広告などのコンテンツ作成でもまず必要となるのが、誰にそのコンテンツを届けるのか、ターゲットオーディエンス・ペルソナ設定です。 一般にペルソナとは、性別・年齢や住んでいる地域、学歴・収入などのデモグラフィック属性や、価値観・性格・趣味・志向などのサイコグラフィック属性などによって設定するもので、より詳細にコンテンツの読み手(≒顧客)をイメージするために作成されます。   一方、もしB2Bビジネスのコンテンツ(読み手が一般の消費者というよりも他社やクライアント・顧客)である場合、読み手が勤務している業界や会社規模、売上規模や事業の展開エリアなどファーモグラフィック属性をもとにしたペルソナ設定が必要です。 このペルソナ設定が曖昧なままでは、どんな書き方が良いのか判断がつかない上、作成したコンテンツの評価も難しくなります。逆に言えば、精緻に設計されたペルソナがあって初めて、そのペルソナに役立つコンテンツを作成できているかという点で評価が可能になるのです。 カスタマージャーニーのどこにいるかもコンテンツ作成の上で重要 [caption id="attachment_25133" align="alignright" width="300"] カスタマージャーニーマップの例[/caption] ペルソナ設定に加えて重要なのが、カスタマージャーニーという考え方。カスタマージャーニーとは、顧客が契約・購入などの意思決定に至るまでの過程・プロセスを指す言葉で、「(ニーズや課題の)認知」や「検討」、「選択・比較」、「意思決定」などいくつかのステップ・フェーズがあります。   同じペルソナ(属性)の読み手でも、ある製品・サービスを検討し始めたばかりなのか、十分な比較検討を経て契約・購入直前なのかといったフェーズにより、作成すべきコンテンツ・内容・書き方が変わります。 例えば、訪日外国人向けに「東京の観光ガイド」ページや記事を作成する場合。コンテンツのターゲットを A.「東京に興味はあるものの、まだ旅行に行くかは決めていない」オーディエンス(カスタマージャーニーの「認知」フェーズ)とするのか、 B.「東京に旅行することは決まっていて、おすすめのホテルやレストラン情報を得たい」オーディエンス(カスタマージャーニー上の「選択・比較」や「意思決定」フェーズ) とするのかで、作成する観光ガイドのページ・記事内容や書き方が違ってくると思いませんか? 実際のコンテンツ作成では「ペルソナとカスタマージャーニーのステップの組み合わせ」で、制作するページや記事のターゲットが誰なのか(Who)を設定する必要があります。 What:解消すべき課題の特定と提示する解決方法(コンテンツのテーマ) 一般的にコンテンツ作成は、設定したターゲット(ペルソナ)が抱えるニーズや欲求、課題の解消が目的です。もしコンテンツによって、ターゲットのニーズや欲求、課題が解消されなければ、制作したWEBページやブログ記事の価値は低いということになります。 良いコンテンツを作成するには、初めに正しくニーズや欲求、解決すべき課題を特定する必要があります。ペルソナで設定した読み手は、「何を知りたいと感じているのか?」「どんな課題に直面しているのか?」「本当にそれを解決したいと思っているのか?」を丁寧に、時間をかけて自問自答することが良質なコンテンツ作成・ストーリーテリングの第一歩です。 さらに読み手が求めているのは、他のホームページにあるのと同じような解決方法ではないはず。何を主題・テーマにして、どんなストーリーで伝えれば、読み手は「この課題解決方法は良い!」と感じるのかを、コンテンツ作成前に整理しておくことも重要です。 一例が「2秒でシャツを畳む方法」。ターゲットの課題を一気に解決するようなアイデアを斬新な手法で提示できれば、多数のオーディエンスを集めることに成功できるという例です(上の動画は再生回数が1,800万回以上!)。ここまでの斬新な解決方法でなくても、何か独自の方法(オリジナリティ)を盛り込むことが求められます。 SEO対策を意識、コンテンツの検索キーワードの選定も重要なテーマ 作成したコンテンツをターゲットカスタマーに届け、アクセスを集めるには、当然Googleなどの検索エンジンでの上位表示(SEO対策)も重要な要素。例えば、コンテンツのテーマとなるキーワードを1つ選定したとして、もしそれが非常に検索回数の多いビッグワードであれば、他社の制作したページも多く、検索結果での上位表示は簡単ではありません。   選定したキーワードを類義語や少し言い換えを行い、検索回数が比較的少ないロングテールのキーワードをテーマとして選定すれば、競合企業も少なく、早期にコンテンツ作成の効果を実感できそうです。作成したページ・記事を掲載するWEBサイトやメディアの規模などにもよりますが、まずはロングテールのキーワードを選定、SEO対策も意識したコンテンツの作成・ライティングがおすすめです。 How:どのように伝えるか、伝え方・書き方の設計 冒頭で触れた通り、今後のコンテンツマーケティングで重視されるのは、「TRUTH(信頼感)」や「TENSION(テンション・緊張感)」。作成したコンテンツの内容が読み手に信頼されたり、あるいは読み手をドキドキ・ワクワクさせてテンションが高まるようなコンテンツを作成するには、どのように伝えるか、伝え方・書き方の設計にも工夫が必要です。   いまアメリカでは、このコンテンツに信頼感を持たせる書き方として新聞や雑誌のジャーナリストの記事の書き方から学ぼうとする動きであったり、読み手をコンテンツに惹き込むための「ストーリーテリング」という手法が注目されています。 制作するコンテンツの読後感の設定(ビフォア&アフター) 最後に、読み手となるターゲットオーディエンスに、コンテンツを読んだ後にどうなって欲しいのか、読後感を制作前に設定することも重要な手順の1つです。 ・このWEBページや記事を読み終えた後、読み手は何を手に入れている状態か? ・この文章を読み終えた後、読み手はどう感じている状態か? ・このコンテンツを読んだ後の読み手の毎日・日々の生活はどう変化するか? 良いコンテンツとは、事前に設定した読後感(=目的)まで読み手の多くを到達させるコンテンツ。あるいは読み手自身が目的とするゴール(課題が解決されたり、知的好奇心が満たされた状態)まで辿り着けるWEBページやブログ記事こそ、良いコンテンツと言えそうです。 読み手に信頼されるコンテンツの書き方~ジャーナリストの基本に学ぶ WEB上の情報量が増え続ける一方、昨今では社会問題にもなりつつあるフェークニュースなど信頼できない・偽物の情報が増えてきているのも残念ながら事実です。このような環境で、多くのインターネットユーザーは信頼できるコンテンツを探し始めていたり、また社会的にもWEBメディアに従来のメディア(新聞・雑誌・テレビなど)と同程度の信頼性を求める風潮が生まれ始めています。   今後のWEBコンテンツの作成においては、これまで以上に読み手に信頼される情報提供や書き方が求められそうです。 では、これまで新聞や雑誌などは信頼される情報機関として、記事コンテンツの作成・書き方の点でどんな工夫をしてきたのでしょうか?以下のような点が、ジャーナリストの基本的なテクニックから学ぶことのできるWEBページやブログ記事の書き方・手法と言えそうです。 具体的な数字・数値を盛り込みコンテンツを作成するのがコツ 読み手の信頼を獲得するための書き方・コツの1つに、できるだけ数字・数値をコンテンツに盛り込む方法があります。例えば、 ・いつ(何年に?何年間で?) ・どれくらい(何件?何人?何社?いくら?) といった内容を制作するページ・記事の要素に盛り込むことがおすすめの書き方の1つ。   「形容詞は、可能な限り数字に置き換える」という考え方は、文章に具体的な数字・数値を盛り込むためのコツです。 ×:長年この事業に取り組んでいます ◯:当社は30年間、この事業に取り組んでいます ×:非常に好評の商品・サービスです ◯:延べ3,000人以上のお客様に利用いただきました 同じ数値を用いて、他には無い新しい視点で作成している事例 この数値も、他社ホームページの既存コンテンツと同じ数値を扱っていたのでは、オーディエンスにとって価値の高い情報とは言いづらいもの。同じ数値でも違った視点からコンテンツを作成すると、説得力が増し、独自性のある内容になる事例を、コンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2018」のセッションで取り上げられたものから紹介します。 蚊が媒介する感染症である「マラリア」ですが、2013年の統計によると世界で60万人以上が死亡しているとのことです(出典:厚生労働省検疫所)。このためワクチンの接種を促すコンテンツは多数あるのですが、これを他のコンテンツと違った視点で伝えているのが、事例として取り上げられたインフォグラフィックス。 着目している事実やテーマ、数値は同じですが、切り口をマラリアという病気ではなく「世界で最も危険な動物」という書き方で伝えています。これによって最も恐ろしい動物は、「毒蛇や毒蜘蛛ではなく(人間と)蚊」であることを伝え、マラリアのワクチン接種を促しているのです。 同じマラリアの危険度やワクチン接種を促すコンテンツを、同じように数字で語るとしても、その書き方や切り口でコンテンツにオリジナリティを持たせることが可能なのです。 信頼できる情報ソースを参考にする~徹底的なファクトチェックが必要 新聞・雑誌のジャーナリストが大事にしているのは「ネタ元」、つまり情報のソース。仮に信頼できない情報をもとに作成したコンテンツが出回り、後から情報が誤っていたことが発覚した場合、作成したコンテンツは価値を失うばかりか、掲載した会社・メディアも信頼を失う可能性があります。つまり、徹底したファクトチェックがWEBページやブログ記事、会社ホームページの作成などでも必要なのです。   誤った事実を含むページや記事を作成することが無いよう、必要な情報は例えば大学などの教育機関が発表している文献や調査結果、第三者機関の調査データから収集して記事コンテンツを作成すべき、というのがジャーナリストの基本な考え方であり、書き方。また、コンテンツ内でその情報のソース・出所を明示すれば読み手の信頼感も高まり、良質なコンテンツになりそうです。 自分で収集した一次情報でなくても、信頼できる機関が集めた二次情報をもとにしたコンテンツであれば、読み手の信頼も得られそうです。一方、自分と同じように二次情報をもとに作成したページや記事を情報ソースにしてコンテンツを作成することは誤情報の恐れもあるため危険です。 ジャーナリストの中には、必要なのは「自分は無知であるという自覚」と言う人も。謙虚に、時間をかけて丁寧に事実を調べ上げながらコンテンツを作成するという方法・書き方が必要です。 独自アンケートは他社コンテンツには無いユニークな情報・武器 他社のホームページなどで、すでにコンテンツとして発信されている内容や見解だけでは、独自性が無く、作成するページや記事の価値も低いものになります。できれば独自に実施したアンケートの結果を盛り込むなど、一次情報の要素を含められればコンテンツの独自性が増し、作成するページ・記事の価値が上がります。   一方、そのような独自アンケート調査が難しくても、実際に自分で製品やサービスを利用・体験して、その結果、自分が感じた情報を盛り込むという書き方でも、コンテンツにオリジナリティを持たせることが可能です。 エキスパートやインフルエンサーによる口コミ、第三者の声を引用 書き手の1人称で書くだけよりも、第三者の声を引用し、文章を追加することはコンテンツの信頼性獲得に繋がります。   例えば、いかに人気の製品・サービスであるかを、売上推移や利用者数推移などの数値やグラフで表現することも重要ですが、それだけでは「なぜその製品・サービスが人気なのか?」、その理由や原因は伝わりにくいもの。グラフや数値だけでなく、実際に利用した人がコンテンツの話者となることで真実味や信頼感が増すのです。 もちろん一般のユーザー・消費者の声も重要ですが、コンテンツの信頼性獲得という点ではその分野のエキスパート・インフルエンサーの声や意見をコンテンツに盛り込むことが効果的です。 誰にでも分かりやすい文章・書き方で作成する [caption id="attachment_26021" align="alignright" width="300"] アメリカの成人の読解力についての調査結果(出所: Contently)[/caption] コンテンツを書く上で「自分は中学生・高校生レベルの文章しか書けないのにどうしよう…」と不安を感じる方もいるかも知れません。が、アメリカの作家・ヘミングウェイの代表作「老人と海」は小学校4年生程度の読解力があれば読める文章・語彙とされています。つまり良質なコンテンツやストーリーを作成するのに、高等な文章力は必要ないのです。   むしろ、それ以上に簡単な書き方でなければ、広くターゲットオーディエンスに理解される文章にはならない可能性もあります。例えばアメリカにおける成人の読解力レベルは、平均すると中学生レベル。つまり高校レベルの文章の書き方では、そのコンテンツの意味が正しく理解されない可能性もあるのです。「中学生でも理解できるレベルの分かりやすい文章」がコンテンツの書き方に求められると言えます。   以上、WEBページやブログ記事のコンテンツ作成・書き方で重要なポイントを、ジャーナリストから学ぶことのできる考え方や書き方なども含め、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2018」で取り上げられたテーマを中心に紹介しました。 コンテンツマーケティングや「Content Marketing World 2018」の概要については、「コンテンツマーケティングの定義と考え方~2018年の最新トレンド~」も併せてご覧ください。     EXIDEAではグロースハックを実現する仲間を募集しています。 ご興味のある方はぜひ弊社の求人情報もご確認ください! グロースハッカー求人情報...

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コンテンツマーケティングにおけるAIの活用事例やツールの紹介

すでに私たちの身の回りにある多くのデバイスやアプリケーションに搭載されているAI。これまで解決が難しかったマーケティング上の課題を解決したり、実施中のマーケティング施策を効率化するなど、コンテンツマーケティングにおけるAIの活用は今後検討が欠かせないテーマの1つです。   一方、まだコンテンツマーケティングでAIを本格的・実用的に活用している事例は限定的で、現在は黎明期。逆に言えば、早期にAIを活用して自社のコンテンツマーケティング施策をレベルアップできれば、それがそのまま競合優位性に繋がるチャンスがあるとも言えます。   このページではAIの基本的な考え方を解説、コンテンツマーケティングへの活用事例や、AI・機械学習機能を搭載したコンテンツマーケティングツールなどを紹介します。 このページは、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2018」に参加した中で、AIに関連するトピックスを抜粋して紹介するページです。コンテンツマーケティングや「Content Marketing World 2018」の概要については、「コンテンツマーケティングの定義と考え方~2018年の最新トレンド~」も併せてご覧ください。 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 そもそもAI(Artificial Intelligence:人工知能)の活用とは? すでに私たちの身の回りには多数のAI技術を活用したサービスやデバイスが生まれていますが、コンテンツマーケティングを初め、マーケティング業務や施策の中で活用されているシーンはまだ少ない様子。ですが、AIの強みを理解して上手く活用できれば、今までよりも遥かに短時間で、効果的なマーケティング業務の実施が可能となったり、これまで技術的、あるいはコスト面の制約で実施できなかった施策が実現可能になるかも知れません。   AIを私たちのコンテンツマーケティング活動に活用するため、まずはAIの定義や強みを理解していきましょう。 AI(Artificial Intelligence:人工知能)の定義 アメリカで開催されるマーケティングイベントのAI関連セッションに出席しても、必ずセッションの初めに「What Is AI (Artificial Intelligence)?」というような定義の説明が盛り込まれます。それだけアメリカ(もしくは世界)でも、まだAIの定義が明確に浸透している訳ではないようです。   話者によって多少異なるものの共通する定義は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、「コンピューターシステムに、人間と同様の知覚や知性(視覚認識や音声認識、言語理解、意思決定など)を獲得させるための技術」であるという考え方。   また人間が成長して高度な思考力を獲得するのと同様、AIにもいくつかの成長段階があり、比較的単純なルールに基づく演算処理を行うアルゴリズムから、事前に与えられたサンプルやルールに従って処理を行う機械学習(Machine Learning:マシンラーニング)、さらに高度な情報処理や判断が可能に可能になる深層学習(Deep Learning:ディープラーニング)などがAIの対象に含まれます。 私たちの身の回りですでにAIが活用されている事例 すでにAIは広く私たちの生活に浸透し始めています。私たちの身の回りにあるデバイスやアプリケーションの中には、すでにAIを活用して実現されているものも少なくありません。以下にその事例をいくつか紹介します。 分野具体的なサービスAIの活用事例 マップ・経路検索Googleマップ、Uber、Lyftなど渋滞情報や事故情報なども含め、目的地に最短時間で到着できるルートや到着時刻の予測・計算/Uber・Lyftではドライバーの到着時刻の計算のほか、需要状況に合わせた料金の変動にもAIが活用されている 自動運転テスラ・トヨタ・Uberなどまだ実験段階だが、2020年以上は大量生産に入るとの予測もある/AIによる自動運転によって、人間が運転するよりも事故の可能性を90%低くなるなどの効果が期待されている EメールGmailなどスパムメール・迷惑メールのフィルタリングや、自動のカテゴリ分け・重要度の設定など、EメールにおけるAI活用はすでに何年も前から取り組まれている 教育・ドキュメント作成Grammarlyなど大学での宿題・レポートや、原稿などのドキュメントの盗作チェックにもAIの自然言語処理技術が活用されている ソーシャルメディアFacebookなど例えば、写真をアップすると写っている人の顔を認識して自動でタグ付けされる機能にAIの画像認識技術が活用されていたり、個人の嗜好によってニュースフィードの内容を変えるなどの機能でAIが活用されている スマートパーソナルアシスタントGoogleアシスタント、Amazon Alexaなどスマートフォンやスマートスピーカーに搭載されているパーソナルアシスタント機能はAIの音声認識技術によって実現されている AIの強み~コンテンツマーケティングへの活用方法 現段階で言えば、感情表現や高度な判断、他人と関係性を持つことなどはAIにできないことですが、すでに人間以上の能力で実行可能なことがAIにはあります。コンテンツマーケティングにも応用可能なAIの強みやコンテンツマーケティングにおける活用方法とは、具体的には下記のような点です。 機械学習により高度なアトリビューション分析が可能に 様々なマーケティングチャネルや認知経路、WEBサイトへの流入経路の中から、最も最終成果(売上)に貢献したマーケティング施策や、コンテンツ、経路を明らかにするための分析。これまでも最終的なコンバージョン直前のページや経路の分析は比較的簡単に実施できましたが、あるユーザー・顧客がその製品・サービスを一番最初に知ったのはいつ・どのコンテンツがきっかけだったか(最初にWEBサイトに訪れたのはいつ、どのページだったか、等)を分析するには大量のデータを処理する必要がありました。   これがAIの機械学習によって可能になり、高度なアトリビューション分析が実現可能になりつつあります。またアトリビューション分析に限らず、複数のマーケティングデータソースを統合、大量のデータ分析を比較的短時間で実行できる点はAIの強みの1つです テキスト分析によりどんなコンテンツを制作すれば良いかが分かる Googleの検索アルゴリズムは非常に高レベルのAI(深層学習システム)ですが、そのアルゴリズムは非常に複雑でGoogleですら詳細を把握できないレベルと言われています。一方、あるキーワードの検索結果として上位10位に入るページ、上位20位に入るコンテンツは検索すれば簡単に把握することができます。つまり、これらの検索結果情報をもとに、AIを使って“Googleの検索アルゴリズムをリバース・エンジニアリングすること”が理論的には可能です。   例えば、上位10位や20位に入るコンテンツではどんなテキスト(単語・表現)が使用されているか、HTMLのマークアップで共通した特徴が無いかなどをAIを活用して分析、どんなコンテンツを制作すればGoogleの検索で上位に表示されるか、傾向を把握することが可能です。こうしたAIの活用は、コンテンツマーケティングの中でも検索エンジン対策(SEO)で力を発揮しそうです。 さらにこれが発展すると、AIが「何を書けば良いかを教えてくれる」だけでなく、AI自身が「コンテンツを制作してくれる」ことも可能になると予想されます。実際、2018年中には20%のビジネス関連コンテンツがAIによって制作されるだろうという予測もあります。(出典:Gartner Predicts Our Digital Future) マーケティング施策・キャンペーン実施に最適な時期の未来予測 ・どの時期に、どんな(検索)ニーズが生まれるか? ・いつメールを送信すると、最も開封されるか(よく読まれるか)? ・実施するなら、いつキャンペーンを実施するのが最も効果的か? 過去の様々なコンテンツマーケティングのデータから、次のマーケティング施策やキャンペーンを最も効果的に実施するために、最適な時期、未来を予測できる点もAIの強みの1つ。このAIによる未来予測をもとに、効果的なタイミングで最適な内容のコンテンツマーケティング施策やキャンペーンを実行することで、マーケティング効果やそれに伴う売上を最大化することが可能になります。 AI技術を活用したコンテンツマーケティングツールの紹介・事例 ここまでに説明したようなAIの強みを活かし、すでにAI技術を搭載したコンテンツマーケティングツールが多数提供されています。世界最大級のコンテンツマーケティングイベント「Content Marketing World 2018」でブース出展していたツールの中からいくつか代表的なものを紹介します。 WEBコンテンツを比較・評価するマーケティングツール「Concured」 作成したWEBコンテンツの評価や競合サイトのWEBコンテンツとの比較・評価、トレンドの検索キーワードと自社コンテンツのギャップなどが分かる、イギリス発のAIの自然言語処理技術を活用したコンテンツマーケティングツール「Concured」。   例えば、 ・競合サイトのコンテンツと自社サイトのコンテンツの“ギャップ”(競合と比較して自社はどんな内容のコンテンツが不足しているか)を明らかにする ・自社と競合における同一テーマのページコンテンツをもとに、それぞれのソーシャルメディア上でのエンゲージメント(シェアやリツイート件数など)をスコア化して比較する ・特定のキーワードをテーマにしたWEBコンテンツを、競合サイトは何ページ制作しているかを比較する といった機能があり、コンテンツマーケティングの戦略レベルで競合と自社を比較したり、自社のコンテンツマーケティング戦略で不足している部分を明らかにすることなどが可能なツールです。 競合企業のマーケティング戦略をAIがモニタリング「Crayon」 競合サイトのコンテンツマーケティング施策の動きをモニタリングし、それを可視化したり定量化して評価可能になるコンテンツマーケティングツール「Crayon」。   具体的には、競合サイトのページを定期的にクローリング、TOPページや採用ページ、プレスリリースなどのコンテンツに変更があれば、その変化を通知してくれるツールで、製品・サービスの価格変更などのコンテンツ変化もモニタリング可能。またWEBサイトだけでなく、競合のソーシャルアカウントや一般の口コミ・掲示板サイトの内容も定期的にAIが監視、競合のソーシャルメディア戦略の変化や一般カスタマーによる競合製品・サービスの定性評価・評判情報を収集することも可能です。各コンテンツの変化を察知したり、言語解析の部分でAI技術が活用されています。 コンテンツ作成からパソナライゼーション・レコメンドまで「Skyword」 Skywordはコンテンツマーケティングの戦略立案に役立つだけでなく、AIを活用したサイト上でのパーソナライゼーション・レコメンド機能(エンジン)も搭載した強力なコンテンツマーケティングツール。 コンテンツマーケティングでは品質の高いコンテンツを創り出すだけでは不十分で、そのコンテンツを必要とするオーディエンス・顧客に確実に届いて初めてその効果を発揮するもの。WEBコンテンツやEメールでパーソナライゼーション機能やレコメンド機能を活用すれば、AIにより個々のユーザーに最適と思われるコンテンツが表示され、クリック率や開封率の改善、最終的には自社の製品・サービスそのものへのエンゲージメントが圧倒的に高まる可能性もあります。 またどちらかと言えばSkywordは複数の部署や比較的大人数がコンテンツマーケティングに携わる大企業向けのツールで、関連するメンバーに正しくコンテンツマーケティング戦略が浸透するよう、ダッシュボード上で自社のターゲット顧客像(ペルソナ)を共有できたり、コンテンツの作成・発行スケジュールを確認できるほか、コンテンツ制作の進行管理機能など、多機能であることも特徴です。 ナレッジデータベースサービスを提供「Yext(イエクスト)」 飲食店や小売店店舗の住所情報や、営業時間、メニューなどを統合・管理する「ナレッジデータベース」サービスを提供するYext。Yext自体がAIを活用していると言うよりも、GoogleやAmazon、FacebookなどのAIサービスに欠かせないコンテンツを提供しているサービスです。   Googleなどの検索エンジンでで会社名や店舗名を検索すると「ナレッジグラフ」と呼ばれる特別な情報エリアが表示される場合がありますが、これらの情報ソースの1つがYextの情報です。 例えば、Googleの検索結果やAmazon Alexaなどのサービスで活用されるAIは、ユーザーの要求に対してすぐに正確なデータを回答する必要がある一方、WEB上のコンテンツはテキストや動画、音声などさまざまなデータ形式に分かれていたり、同じ店舗情報でも参照するサイトで内容が異なる場合もあり、AIにとってどれが“真実”かを判断するのは容易ではありません。   この課題を解消するアイデアがYextのナレッジデータベース。YextはGooleやBingなどの検索エンジンや、Facebook・Instagramなどのソーシャルメディアとデータ連携しており、Yextの顧客は自社の情報をYext上で変更するだけで瞬時に各検索エンジン・ソーシャルメディアに正しい情報を送信できます。特に店舗数が多い外食チェーン企業などでの活用・導入事例の多いサービスです。 もう1つの側面~マイクロコンテンツの重要性の高まり 上記で紹介したYextの事例とも関連しますが、AI化によるコンテンツマーケティングへのもう1つの影響がマイクロコンテンツの重要性が高まっている点です。日々インターネット上で生み出される情報の量は増える一方で、さらに画像、音声、動画など情報フォーマットも多様化、AIが処理すべき量や処理の複雑さは増すばかり。その中から正しい情報・真実をAIに選択させるのは至難の業です。   そこで重要になるのが、Yextが管理する「ナレッジデータ」のようなマイクロコンテンツと呼ばれる“正確な情報・事実”とされるコンテンツです。 変化するマイクロコンテンツの定義とコンテンツマーケティング そもそもマイクロコンテンツとは、どのようなコンテンツを指すのでしょうか?   もともとマイクロコンテンツという言葉が使われ始めたのは、1998年のこと。ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン氏が、ページのタイトルやメールの件名など「見た瞬間に内容が分かるもの」を意味したものでした。これが2002年頃から、ブログやTwitterのメッセージなど「文字量の少ないコンテンツ」という意味合いでも使われ始めました。   現在ではさらに第三の意味として、「AIなどのマシン・ロボットが理解しやすい形で真実・事実を伝えるためのコンテンツ」という意味合いで使われ始めています。このマイクロコンテンツの考え方や動きを理解していなければ、いくら良いコンテンツを制作してもGoogleの検索ロボットなどに発見されなかったり、また正しい情報と認定されない可能性もあるのです。 これからのコンテンツマーケティングでは、このマイクロコンテンツのように「AI・検索エンジンからはどう見えているか」を意識しながらの取り組みが必要となります。 AI向けの商品情報マネジメントやデジタルナレッジマネジメントが必要 例えば、あるメーカーが生産する製品が各国で翻訳され、複数のWEBサイトで商品情報が提供されているとします。誤訳や単純なミスがあると、1つの製品であるにもかかわらずAIなどのマシン・ロボットからするとどれが正しい製品情報なのか判断できなくなる恐れも。これを避けるため、Product information management(プロダクト・インフォメーション・マネジメント:商品情報管理)という考え方が必要とされてきています。製品の情報をできるだけ一元で管理しようというものです。   Yextによるデジタルナレッジマネジメント(Degital Knowledge Management:DKM)も同様で、飲食店や小売店店舗の情報が様々メディアや検索エンジンに散在する中、1箇所のデータを変えればすべてに変更が反映されるという考え方。このようなサービス・データベースがあればAIもどれが事実かを判断しやすくなり、店舗運営側も正しい情報をユーザーに届けることが可能です。   一方、従来の手法で店舗の営業時間や住所などの情報を独立したデータベースで管理していると情報の更新性が相対的に低く見えるため、ユーザー・検索エンジンからの評価が下がる恐れもあります。 更新される可能性のある情報コンテンツを提供する場合、ソースをどこから引用するのが良いのか、APIなどのシステム連携で絶えず最新の状態に保つ方法は無いかといった点まで、今後は考慮が必要となりそうです。 検索エンジン向けの構造化データマークアップもマイクロコンテンツの1つ またGoogleなどの検索エンジンが推奨するWEBコンテンツの構造化データマークアップもまた、AIが情報を正しく理解するのに必要なマイクロコンテンツの1つと考えられます。構造化データマークアップとは、WEBページの要素をルール(Schema.org)に従って記述し、Googleなどの検索エンジン・クローラーロボットにコンテンツ内容を適切に伝えるための手法ですが、AIが理解・処理しやすい情報提供の形として今後ますます重要性が増しそうです。   どれだけ良いコンテンツを作成しても構造化データについての配慮がなければ、AIにとって理解・処理しづらいコンテンツとなり、検索順位が上がらず、結果的にユーザーの目に触れづらいコンテンツとなる可能性もあります。     以上、AIの概要やAIがコンテンツマーケティングに及ぼす影響・ツールの活用事例など、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス「Content Marketing World 2018」で取り上げられたテーマを中心に紹介しました。 コンテンツマーケティングや「Content Marketing World 2018」の概要については、「コンテンツマーケティングの定義と考え方~2018年の最新トレンド~」も併せてご覧ください。     EXIDEAではグロースハックを実現する仲間を募集しています。 ご興味のある方はぜひ弊社の求人情報もご確認ください! グロースハッカー求人情報...

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コンテンツマーケティング・ワールド・2018

コンテンツマーケティングの定義と考え方~2018年の最新トレンド~

自ら制作・流通させるコンテンツによって、ニーズの顕在化した顧客だけでなく見込み客をも対象に購買アクションを引き起し、顧客のファン化までを実現するというマーケティング活動を指すコンテンツマーケティング。残念ながら、その定義や考え方にまだ曖昧な部分があったり、他のSEO対策やインバウンドマーケティングといった施策との違いが分かりにくい面もある様子。 一方、2018年9月にアメリカ・オハイオ州クリーブランドで開催されたコンテンツマーケティング関連の世界最大級イベント「Content Marketing World 2018」(コンテンツマーケティングワールド)には世界60ヶ国から延べ3,500人以上が参加、海外ではコンテンツマーケティングに対する関心が非常に高いと感じます。 そこでこのページでは、EXIDEAの代表としてアメリカ支社長・青木が参加した「Content Marketing World 2018」のレポートをともに、あらためてコンテンツマーケティングの考え方や定義、コンテンツマーケティングが意味する範囲や具体的な施策内容、最新トレンドなどを解説します。 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 そもそもコンテンツマーケティングとは何?~考え方やその定義~ まずはじめにコンテンツマーケティングの考え方や定義を紹介します。まだ定義が曖昧な面もあるようで、人によっては「コンテンツマーケティングとはSEO対策のことだ」と考えていたり、「コンテンツマーケティングとはソーシャルでバズらせること」との意見を目にすることも。 さまざまな考え方や定義があるものの、このページでは今回参加したイベントを主催する団体でもある「コンテンツマーケティング・インスティチュート(Content Marketing Institute)」による以下の定義を前提に解説します。 Content marketing is a strategic marketing approach focused on creating and distributing valuable, relevant, and consistent content to attract and retain a clearly-defined audience - and, ultimately, to drive profitable customer...

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ABテストツールによるグロースハック~OptimizelyとVWOの事例~

主にオンラインでサービス提供するビジネスの成長や、運営するWEBサイトのグロースハックにおいて、いまやABテストは欠かすことのできない方法・手法の1つです。またビジネスの主体がオフラインであっても、ネットを通じて見込み顧客を獲得したいB2B企業や、リアルのイベント・セミナー集客をWEBで行う場合等でも、圧倒的成果(=グロースハック)を生み出すためにABテストを実施することは効果的な手段の1つと考えられます。   このページではABテストに詳しくない方にも、すでに取り組み中の方にも役立つよう、ABテストとは?という概要や代表的なABテストツール・OptimizelyやVWO(Visual Website Optimizer)の紹介、またABテストツールを活用したグロースハック事例を具体例を交えて紹介します。 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 そもそもABテストとは(実施の目的や代表的なツールなど) 最近では活用が常識となりつつある「ABテスト」や、効率良く、かつ効果的に実施するために必要な「ABテストツール」。オンラインサービスのグロースハックに欠かせない1つの方法・手段として、WEBサイト運営者であれば必ず知っておきたいもの。まずこのページの前半ではABテストについてあまり詳しくない方を対象に、ABテストの概要や実施の目的、代表的なツールを簡潔に紹介します。 なぜABテストという方法がグロースハックに必要なのか ABテストとはWEBサイトの改善により売上などの最終成果を最大化する(=グロースハック)ための方法の1つ。2つ以上の画面デザイン、あるいは画面の一部パーツのデザインを複数パターン(例えば、パターンAとBなど)用意し、それらをランダムに表示させ、どのデザインが(パターンAとBのどちらが)最も優秀かを運用中のサービス上で実験・検証するための方法です。 仮に複数のページデザイン案があった場合、主観で優劣を判断することなく、どのデザイン案がWEBサイト、もしくは該当ページの目的(クリック率やコンバージョン数の最大化、最終的な売上の最大化など)を達成するのに最も効果的か、実験的、かつ定量的に評価できるようにするのがABテストです。 またABテストを通じて改善するデザインとは、単にWEBページの色合いやレイアウトなど見た目を表す狭義のデザインではなく、画面上の文章・テキスト内容や商品・サービスの名称・価格変更なども含む、より広義の意味でのサービス全体のデザインを指しています。オンラインサービスのグロースハック実現に必要な、あらゆる視点での変更実験や効果検証が可能な点がABテストの特徴です。 「製品」と「オンラインサービス」~デザインという観点での違い~ 工場で生産・製造されるような「製品」のデザインとは異なり、WEBサイトのデザインは常に変更可能で、また現在のデザインが100%完璧であるという確証もありません。従来の工業的な思考から離れ、「プロダクトデザインはいつでも変更できるもの」「完璧なデザインを追求し、常に改善を継続すべきもの」という前提に立った時に生まれたのが、ABテストというグロースハック手法です。 グロースハックの基本的な考え方・ミッションである、常に仮説を持ち、小さな実験で数値で評価可能な検証を積み重ね、大きな事業成長を実現するということを、まさに体現しているものの1つがABテストです。 もちろん、工場で生産・製造されるような製品でも、製造・販売開始前にプロダクトデザインに関するテストが行われる場合もありますが、オンラインサービスのデザイン・WEBサイトのABテストとは下記の観点で根本的に異なると考えます。 「製品」のデザインやそのテスト「オンラインサービス」のデザインやそのテスト プロトタイプ・試作品によるテストのみ稼働中の本番サービスでのテストが可能 サンプリングされた一部のテストユーザーによるテスト実際のサービスを利用中のユーザーによるテスト、かつテスト範囲や規模の大小を調整可能 デザインの優劣の数値的な検証が難しい(最終的なデザイン決定に製品開発者の主観が入りやすい)デザインの優劣を数値的に検証可能(サービス運営者の主観を極力排除できる) 一度テストを経て決めたデザインは基本的に変更不可(工場の生産・製造ライン等があるため)ABテストを繰り返し実行し、継続的にデザインを改善可能 「製品」デザインとは異なり、「オンラインサービス」デザインは絶えず改善の仮説を立て、それを検証するための実験が可能で、またどの程度改善されたかの効果を数値で測定・評価可能なことからグロースハックの対象となり得るのです。 WEBコンテンツだけでなく、メールマーケティングの場合にも有効 ABテストはWEBコンテンツの改善やグロースハックのみならず、メールマーケティングの改善・グロースハックにも有効な手法です。メールマーケティングによる効果を最大化には、開封率の最大化やメール本文からのリンククリック率の最大化が必要ですが、この効果改善にもABテストが役立ちます。 例えば、メールの件名に複数の候補・パターンがあれば、まずは配信対象の10%ずつにAパターンの件名・Bパターンの件名でメールを配信、開封率が良い方のパターンの件名で残りの全対象(80%)に配信するなどのABテストが一般的。比較的簡単にグロースハックを実現できる可能性がある方法です。 またこれ以外にも、メール本文そのものをAパターン・Bパターンの2つに分けて配信、効果を検証したり、配信対象を2つのグループに分け、それぞれ異なる日時に配信することで配信日時による開封率への影響などをABテストで検証することも可能で、それぞれメールマーケティングのグロースハックに欠かせない手法です。 ABテストを成功させる3つのノウハウ・ツール導入をおすすめする理由 とは言え、ABテストさえ実施すれば、あるいはABテストツールさえ導入すれば、どんなオンラインサービスでもグロースハックを必ず実現できる訳ではありません。ABテストを成功させ、目に見える成果を生み出す形で実施・運用するには下記のような3つのコツ・ノウハウがありそうです。 1. 筋の良い仮説を構築する 「ここを変更したら効果が改善するのでは?」と漫然と主観的に仮説を構築するのではなく、「どうしたらユーザーの行動が改善するのか?」、ユーザー心理や現状のログデータを客観的かつ徹底的に検証・分析し、その結果として導き出される筋の良い仮説をベースに、現状(パターンA)に対する変更案(パターンB)を考えるという手順でABテストのシナリオを設計することが、より効果的な改善・グロースハックの実現に必要と考えられます。 売上への寄与の高い仮説を優先してテストを設計・検証 また仮説は1つ構築すれば良いというものではなく、優れたグロースハッカーであれば常にいくつもの仮説を持ち、ABテストで検証すべき改善案・アイデアを複数持ち続けているもの。中でも、特に売上や事業成長へ直接寄与する可能性が高い仮説から優先してABテストのシナリオを設計・検証することで、より早いグロースハック実現の期待値が高まります。 3. テストの実施結果を数値で効果検証・原因を分析 ABテストの実施結果は必ず数値で効果検証されることが必要です。また実施結果が期待した効果を生まなくても、「なぜテスト結果がそうなったのか?」と原因を分析することで、新たな"筋の良い仮説"が生まれ、繰り返し、効果的なABテストを継続的に実施できるようになり、これがグロースハックへと繋がるのです。 上記1~3を可能な限り高速で繰り返す(=グロースハック) 1回のABテストだけで簡単に、事業を圧倒的に成長させるグロースハックを成功させることは、様々な過去の事例を見てもまずあり得ません。むしろ重要なのは、1回のABテストにかかる時間・コストを最小化し、高速で複数回のABテストを繰り返し実行することが、結果として大きな売上・事業成長をもたらすグロースハック実現の秘訣となるようです。 そして、このようなABテストを効果的、かつ高速に実行するためにABテストツールの導入・利用が欠かせないのです。 代表的な無料・有料のABテストツール 現在では様々なABテストツールがあり、以前と比較するとこれらのツールを利用して簡単にABテストを実施、グロースハックに取り組みやすい環境になってきました。特に数値での結果検証や、ABテストを繰り返し高速で実施するにはABテストツールの利用が役立ちます。仮に、自社でABテストを実施するためのシステムを開発したり、テスト結果をモニタリング可能な仕組みを開発するには時間も必要で、無駄な投資になりかねません。   有用かつ比較的安価で利用可能なABテストツールが多数あるためグロースハッカーであれば、必要なグロースハックツールとしていくつかテストツールの利用経験を積んでおきたいもの。またABテストツールには大きく分けて無料・有料のサービスがあり、以下、それぞれ代表的なABテストツールの概要や機能を紹介します。 無料ツールの代表格・Google Optimizeの特徴やメリット Google OptimizeはGoogleが提供する無料のABテストツール。無料である上に基本的なABテストに必要な機能(複数の画面パターン作成や目標設定、設定目標に沿ったテスト結果の検証機能など)を網羅しており、まずABテストを簡単に試してみたい場合におすすめのツールです。   多少のHTMLやCSSの知識があった方がより機能を使いこなせると思いますが、テストパターンのデザイン作成などを画面上で簡単に行うことができ、専門知識が無くても視覚的にABテストのためのデザイン変更が可能な点が特徴。またGoogle Analyticsとの連携も可能で、ABテスト結果の評価・検証をGoogle Analytics上で確認できる点もメリットです。 有料のABテストツール~OptimizelyとVisual Website Optimizer(VWO) 一方、より大規模サイトや複雑な(パターン数の多い)ABテストを行う場合は、有料ツールを導入する企業も多数あります。有料のABテストツールでは、OptimizelyとVisual Website Optimizer(VWO)が世界的に見ても2強の状態。それぞれ世界各国で数千社以上の導入実績のあるツールです。ここからはOptimizelyとVWOの2つのABテストツールの概要や各ツールを利用したグロースハック事例を紹介します。 世界NO.1のABテストツール・Optimizelyによるグロースハック事例 世界的には非常に多くの有料ABテストツールがあり、各サービスごとに機能や強み、価格などが異なりますが、ネット上での口コミや評判、各種レビューを総合すると、世界NO.1のABテストツールであり、効果的なグロースハックツールと言えるのが「Optimizely」。   導入企業数が多く、また各種レビューサイトでの満足度評価も軒並み高いのがOptimizelyの特徴で、また日本語版サービスもあることから日本国内でもよく知られているABテストツールかと思います。 ABテストツール・Optimizely(オプティマイズリー)の概要 ABテストツールを提供するOptimizely社はアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコの企業で、2010年創業の会社。ABテストツールのシェアは世界NO.1で、導入社数は9,000社以上に上ります。   Optimizelyの特徴には、管理画面上から簡単にテストパターンのデザインを作成可能なほか、テスト対象とするユーザーのターゲティング設定も可能で、テスト結果もリアルタイムで確認・検証できる点などが挙げられます。またWEBサイト以外にネイティブアプリのABテスト機能や、Google Analyticsなど外部の分析ツールとの連携も可能です。   ちなみにOptimizelyの創業者であるダン・シロカー氏は、2008年アメリカ大統領選におけるオバマ(元大統領)陣営で、グロースハッカーとしてWEBマーケティング面で力を発揮したことでも知られる人物。アメリカ大統領選挙では、支持者にメールマガジンへの登録を呼び掛けたり、WEBサイト上で個人献金を集めることが重要なのですが、WEBサイト上でのABテストによりそれらの成果のグロースハックに成功、オバマ元大統領の大統領選挙における勝利をサポートしたことで知られています。 その後、シロカー氏はOptimizelyを創業、さらに2012年アメリカ大統領選でオバマ陣営のWEBサイトのABテストツールとしてOptimizelyが採用され、10億ドル以上(約1,000億円以上)の献金獲得に貢献しました。 Optimizelyによるグロースハック事例~2012年アメリカ大統領選挙~ 2012年アメリカ大統領選挙のオバマ元大統領陣営では、20ヶ月に渡る選挙期間のうちに、Optimizelyを活用して延べ500回以上のA/Bテストが実施されたそうです。その結果、個人献金のコンバージョン率が49%改善されたほか、メールアドレス登録の完了率も161%改善するというグロースハックを実現しました。   この時のオバマ陣営のWEBマーケティングチームでは、どんな施策も必ず最初にABテストを行うことを徹底し、またそのために常に複数のABテストの仮説・シナリオと、実行するための人的リソースを確保し続けたそうです。以下、ABテストによるグロースハックの具体的な事例を紹介します。 ●高級レストランのメニューからヒントを得たサイトUI変更 [caption id="attachment_25764" align="aligncenter" width="1024"] 献金金額部分の$マークの有無によるABテスト。左側が元のパターンで、右側が変更後のパターン。[/caption] オバマ元大統領陣営のWEBサイトには、常に個人献金を募るためのフォームが設置されていました。このフォーム経由の献金のコンバージョン率(CVR)を高めることは非常に重要で、そのためにABテストが実施されていました。   それまでの献金フォームには、金額の横に「$」マークが付いていました。ところがアメリカの多くの高級レストランのメニューには「$」マークがなく、金額の数字のみが書かれています。これは、その方がより多くの金額を支払う傾向があることが経験的に知られていたためです。この高級レストランメニューからヒントを得たサイトUIの変更はすぐにABテストへの移されました。 結果的には、このABテストではオリジナルのパターンAと、「$」を削除したパターンBの間で有意な差は生まれず、この点はコンバージョン率に影響を与えないことが分かりました。 ●オバマ元大統領の画像有無によるコンバージョン率(CVR)改善 [caption id="attachment_25763" align="alignright" width="300"] 献金フォームの画像有無によるABテスト。[/caption] 「抽選でオバマ大統領と夕食を共にできる」というプロモーションでも、同様の献金フォームが使われていました。献金をすれば自動的に抽選に参加できるというもので、抽選参加者を最大化、献金額を最大化するグロースハックが重要な目的でした。   この時、モバイルWEBサイトの献金フォームではオバマ元大統領の写真が非表示となっていたそうです。これはモバイルサイトは極力シンプルに軽量なものを、というデザインコンセプトから非表示となっていたそうなのですが、一方で他のABテストの結果から、画像の有無がユーザーの行動やCVRに影響を与えることが分かっていました。 そこでこのプロモーションで使用されたフォームで、オバマ元大統領の画像があるフォームと無いフォームでABテストが実施されました。 結果、画像の無いフォームと比較して大統領の画像があるフォームでは6.9%、コンバージョン率(CVR)改善し、献金額が増額することが分かったのです。 ●長いフォームを複数のステップに分割して実現されたグロースハック [caption id="attachment_25779" align="alignright" width="300"] 元の縦に長いフォーム(左)と4つの画面に分割されたフォーム(右)。[/caption] 2012年アメリカ大統領選挙の終盤、オバマ陣営のグロースハックチームはすでに献金フォームをほぼ最適化できている状態で、これ以上の改善は難しいとも思える状況でした。しかしながら、この段階でより技術的に複雑なABテストに取り組むことを決断します。   個人献金フォームは法律的な観点から必要な文言や入力項目もあり、非常に縦に長い画面になっていました。これに対して、比較的入力しやすい簡単な項目から献金の内容を入力できるよう、フォーム画面を複数の短い画面・ステップに分けたパターンを作成、ABテストを実施したのです。   長いフォームより、複数の短いフォームの方が最終的なコンバージョン率が上がるのではないか?という仮説は、結果的に正しかったことがABテストの結果から証明されました。献金完了のコンバージョン率を5%以上改善するというグロースハックを実現したのです。 選挙戦の終盤、すでにある程度ABテストをやり尽くした段階でもまだ改善可能性があると信じ、効果的な仮説を構築し、結果的に5%以上のCVR上昇を捻り出すという取り組み姿勢は、グロースハックを実現するのに欠かせないスタンスと言えそうです。 ※参考・画像引用元: http://www.optimizely.com/customers/obama2012/ Visual Website Optimizer(VWO)を活用したグロースハック事例 Optimizelyに次いで利用シェアが多く、よく知られているABテストツールがVisual Website Optimizer(VWO)です。 ABテストツール・Visual Website Optimizer(VWO)の概要 Visual Website Optimizer(以下、VWO)はインド企業・Wingify社が提供するABテストツールで、世界数十各国に展開しており、導入社数も4,500社以上。MicrosoftやWalt Disney Companyといった有名・大手企業も導入しています。 VWOのABテストツールとしての基本的な機能はOptimizelyと同等ですが、比較して価格が安い点と、問い合わせサポートが充実している点で評価の高いABテストツールです。また標準でヒートマップ解析を利用できる点がOptimizelyには無いグロースハックツールとしてのメリットです。 VWOによるグロースハックの実践事例 VWOを活用したABテストによるコンバージョン率やクリック率の向上、グロースハックの実践事例も多数紹介されています。いずれも海外での事例となりますが、以下でその一部を紹介します。 ●登録フォームを“隠す”ことで会員登録数60%改善のグロースハック事例 中国ECサイトの最大手・アリババのグループ企業であるアメリカのEC関連企業・Vendioは、複数のECプラットフォームへの商品の出品を管理する、EC出店者向けの無料ツールを提供する会社。会員登録さえすれば無料で利用できるため、EC出店者にとっては一度試して見る価値のあるツールと考えられます。   もともとVendioの画面デザインは、可能な限り登録完了までの手間・画面遷移数を抑え、登録完了率を最大化するために、ランディングページに登録フォームを埋め込む形のデザインでした。すでに非常に簡素化されていたため、これ以上のデザイン改善は考えづらい状態だったとのことですが、VWOを利用したABテストで考え方を全く変えたパターンのテストが実践されました。   登録フォームを別画面に移し、ランディングページではあくまでサービスの内容や価値を訴求するパターンをテストしたのです。ユーザー側からすると手順が増えるため登録完了率が下がるリスクもありましたが、実際には会員登録数が60%も増加するグロースハックとなりました。 [caption id="attachment_25787"...

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Paypalのロゴ

プラットフォームへの統合戦略によるグロースハック~PaypalやSpotifyの事例~

特にスタートアップ企業にとって、新規のユーザー・顧客をどう集めるか、自社の製品・サービスの認知をどう高めるかという点でのグロースハックは、常に大きな課題であり、重要なテーマとなります。   その解決策となるグロースハック戦略の1つが、既存のプラットフォームに組み込まれる“統合”戦略。   十分なユーザー資産やユーザートラフィックがある大規模なプラットフォームサービスに自社の製品・サービスを組み込み、ユーザー認知を一気に獲得できれば短期間での事業成長(=グロースハック)を実現可能です。このページでは、既存のプラットフォームに自社サービスを統合・組み込むことでグロースハックを実現した事例を紹介します。   このグロースハック事例における重要な観点は以下の3点です。 ・自身の製品・サービスを、どこかのプラットフォームに組み込むことは可能か?(プラットフォーム側にもメリットのある形で) ・統合するならば、どのプラットフォームが最適か?(自身の製品・サービスの潜在的なユーザー・顧客が集まるプラットフォームはどれか?) ・組み込み、統合にあたって、技術面・エンジニアリング的な観点でのハードルは何か? 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 Paypalのグロースハック事例~eBayの決済サービスへの組み込み~ Paypal(ペイパル)は1998年創業のオンライン決済サービスを提供する会社で、本社はアメリカ・カリフォルニア州のサンノゼにあります。全世界で2.4億ものアクティブなアカウントが開設・利用されており、2017年の決済総額(Paypalサービスを通じて支払われた金額の総額)は4,570億ドル(約50兆円以上)、いまだに前年比20%以上の水準で成長し続けている企業です。   このPaypalの決済サービスは1999年の開始当初、登録ユーザー数(アクティブ・アカウント数)が1万人程度でしたが約1年で数百万人規模のサービスに拡大、2002年までの約3年間で約1,300万件のアカウントを獲得するまで急成長を遂げ、IPOを果たした後にeBayに買収されます。この急成長の影には、サービス初期に実施されたいくつかのグロースハック施策がありました。 ECサービス「eBay」の決済方法としての統合・組み込み 当時、アメリカで成長・拡大し始めていたオンラインショッピングやオンラインオークションのサービス。その代表格がeBayでした。Paypalは自社のオンライン決済サービスの利用を拡大するには、eBayの決済方法の1つとしてPaypalを組み込むことが必須と考えました。   一方、eBay側もまだ小切手による支払いも多かったアメリカにおいて、簡単で安全な決済手法を導入してオンライン決済を拡大することは急務でした。また、既存のクレジットカード決済と比較しても手数料の安いPaypalサービスは、eBayを利用する出店者・ユーザーに必ず受け入れられるだろうと考えたのです。 このようにプラットフォーム側(eBay)が製品・サービス(Paypal)の必要性や価値を強く感じたからこそ、プラットフォームへの統合によるグロースハックが実現できたのです。 ただ、eBay上での決済方法の1つとしてPaypalを追加するだけなら簡単ですが、実際にはeBay上の各出店者に自店舗で対応可能な決済手段の1つとして登録する作業をしてもらい、eBay上でのPaypal決済が拡大していかなければなりません。   このためPaypalは、eBayの出店者に"Paypalで決済できる"ことをユーザーへ積極的に知らせてもらうため、店舗ページにPaypalロゴを簡単に挿入できるツールをeBayと共同で開発・導入しました。この結果、eBay上の非常に多くの店舗ページで、既存のクレジットカード会社のロゴ(Master CardやVisa Card、AMEXなど)などと横並びでPaypalのロゴが表示されるようになったのです。 この施策によって既存の決済手段(大手クレジットカード会社など)と横並びとなったことでPaypalの信頼性が格段に向上したと考えられています。この結果、急速にPaypalの利用が拡大したというのが、eBayというプラットフォームへの統合・組み込みにより実現したPaypalのグロースハック事例です。 Paypalの紹介マーケティングによるグロースハック事例 eBayへの統合・組み込みによるグロースハックでよく知られているPaypalですが、Dropboxなどと同様の紹介マーケティングによるグロースハック事例も有名です。   Paypalも1999年のサービス開始当初はテレビやラジオなどの既存の媒体を使った広告宣伝によってユーザーを獲得しようとしましたが、期待するほどの効果が無かったそうです。そこでPaypalアカウントの開設を促進するために、以下のような招待制度を導入しました。   ・Paypalアカウントを開設すると、$10が自分のPaypal口座に振り込まれる。 ・さらに、友人・知人にPaypalを紹介すると、$10が自分のPaypal口座に振り込まれる。   この報酬額はその後$5に減額され、現在ではこの紹介マーケティングは実施されていません。しかし、この手法により2000年3月から夏頃までの数カ月間で、400万人のユーザー獲得、グロースハックを実現しました。 ※当時、PaypalのCEOだったイーロン・マスク(現在の電気自動車メーカー・テスラCEO)によると、この招待マーケティングの費用としてPaypalは6,000万ドル以上(約70億円以上)を投じたそうです。ただ、その後2002年にPaypalは15億ドル(約1,600億円)でeBayに買収されています。 このような紹介マーケティングによりバイラルに新規ユーザーを獲得すると同時に、eBayへの統合・組み込みによりPaypalを利用できる場を拡大、Paypalによる決済総額を一気に拡大しするというグロースハックを実現しました。 Airbnbのグロースハック事例~Craigslistへの転載~ 宿泊予約サービスを運営するAirbnb(エアビーアンドビー)もまたグロースハックにより急成長を遂げているオンラインサービスの1つ。そしてAirbnbの成長を語る上でCraigslist(クレイグスリスト)を活用したグロースハック事例は欠かすことができません。   Craigslist(クレイグスリスト)とはアメリカ発の地域別掲示板サービスで、無料で掲載できる個人間の情報交換を目的とした掲示板や、クラシファイド広告と呼ばれる有料掲載の掲示板(求人や不動産など)サービスで構成されています。月間ページビュー数200億以上、アメリカ国内からのアクセスだけで月間約5,000万人の訪問者がいる巨大なプラットフォームサービスです。 各地域ごとの不動産賃貸情報や短期レンタルなどの情報に関連する掲示板もあることから、Airbnbがターゲットとするような“普通のホテルでは満足しない”ユーザーも多数Craigslistを利用していると考えられました。 Airbnb掲載情報のCraigslistへの投稿 サービス開始初期のAirbnbも他の新規サービスと同様、ユーザー獲得が課題でした。また"民泊サービス"という性格上、ユーザーだけでなく宿泊場所を提供してくれるホストの開拓も同時に必要でした。いわゆる“Chicken or the egg”(鶏が先か、卵が先か)という課題に直面していたのです。   Airbnbのユーザー数が少なければ、掲載しても効果を期待できないためにホストの開拓が進みません。またAirbnbの掲載情報件数が増えなければ、ユーザー数も増えません。 この大きな課題を解決したのが「Airbnb掲載情報のCraigslistへの投稿・転載」によるグロースハックです。 Airbnbは、宿泊情報を掲載中のホストが利用する管理画面に「Post to Craigslist(クレイグスリストに投稿する)」というボタンを設置、「Vacation Rental(バケーション・レンタル)」などのClaigslistの無料カテゴリに、Airbnbの掲載情報を数画面の遷移で簡単に投稿・転載できるようにしたのです。   さらに、Craigslist上の情報を見たユーザーはAirbnbのWEBサイトを訪れて宿泊予約をします。このため転載が進むほどに、新規のユーザー獲得が進みました。また毎月数千万ユーザーが訪れるClaigslistへの投稿・転載が簡単にできるため、ホスト側のAirbnbに対する価値や効果への期待感も高まったのです。 こうして、AirbnbはCraigslistという巨大なプラットフォームを“無料で”活用し、ユーザーとホスト(および実際の宿泊予約)を同時に獲得するようなグロースハックを実現したのです。 マーケティング志向のエンジニアがいたから実現できたグロースハック [caption id="attachment_25728" align="alignright" width="300"] airbnbのユーザー数の成長グラフ[/caption] このAirbnbのグロースハックの凄い点は、Craigslistが正式にAPIなどを公開していない(Craigslistが外部システムによる投稿を正式に許可していない)中、エンジニアリングスキルにより実現されている点です。   グロースハッカーではなく従来型のマーケティング人材であっても、Craigslistへの掲載・転載というアイデア自体は思いついたかも知れません。しかしながら、Craigslistが正式にそれを許可していない上、Craigslistへの有料広告掲載の場合は1件あたり月間数十ドル(数千円)の費用がかかります。つまりAirbnbの情報を転載するというアイデアがあったとしても、どのような仕組みでそれを実現すればよいのか想像がつかない可能性もあるのです。   一方、エンジニアリング面からも解決策を考えられるAirbnbのグロースハッカーたちは、あたかもホスト自身が自らCraigslistに投稿したかのようにAirbnbの掲載情報をCraigslistに転載するにはどうすれば良いかを研究したそうです。彼らは、Craigslistの投稿プログラムをソースコードから解読、投稿の仕組みを再現(リバース・エンジニアリング)することで、AirbnbからCraigslistへの転載投稿機能を実現しました。   さらにこのCraigslistへの投稿・転載機能によるグロースハックが優れているのは、システム開発費用を除くと広告予算は無料で、また仕組み化されているためAirbnbが介在しなくても永続的に成長を生み出すグロースハックだった点です。 このようなグロースハック事例では、ユーザー数を増やすのだというマーケティング志向と同時に、高い技術的なハードルも超えていくエンジニアリングスキルが必要です。このことから、グロースハックには技術面の解決策も同時に提示できるマーケティング志向のエンジニアが必要だとも言われています。 「グロースハッカー」と「従来型のマーケティング人材」では大きく異なることが、このグロースハック事例からもよく理解できると思います。 Spotifyのグロースハック事例~Facebookへの統合~ 2008年にスウェーデンで開始されたサービスで、現在では65の国・地域で提供されている全世界規模の音楽ストリーミングサービス。ビジネスとしてはフリーミアムモデルのサービスで、広告が入るなど機能が制限される無料会員と、広告が入らず音楽が聴き放題となる有料のプレミアム会員から成るサービスです。全世界でのアクティブユーザー数は1億5千万人以上、有料サービスの利用会員数も7,000万人以上(2017年時点)という巨大な音楽関連サービスで、2018年にアメリカ・ニューヨーク市場に株式上場したことでも話題になりました。   約10年前に生まれたばかりのサービスが、どのようなグロースハックによって世界規模の音楽ストリーミングサービスとなったのでしょうか?この成長の裏にもプラットフォームへの統合・組み込みというグロースハック戦略が採用されていました。 Facebookの公式音楽アプリとしての統合・組み込み 2011年にSpotifyはFacebookは新たな提携関係をスタートさせました。SpotifyはFacebookのサード・パーティ・アプリの1つ、公式の音楽アプリとなったのです。   これによりFacebook上から簡単にSpotifyのアプリをインストール可能になったことに加え、ユーザーのFacebookのタイムライン上にSpotifyでどんな曲を聞いているかが配信されるようになり、ユーザーのタイムラインを通じて友人・知人へSpotifyのサービスが一気に告知されるようになったのです。 Facebookとの統合と同時に米国市場に進出したSpotifyは、それまで数百万人規模だったユーザー数がFacebookとの統合後すぐに2倍近くに跳ね上がり、それから約3年間で10倍規模のサービスにまで拡大しています。 ●Spotifyの会員数の推移 会員数合計うち、有料会員数 2011年3月約600万人約100万人 2011年9月※Facebookとの統合 2011年11月約1,000万人約250万人 2012年12月約2,000万人約500万人 2014年11月約5,000万人約1,250万人 現在ではSpotifyサービスへの登録をFacebookアカウントで行うことができたり、またFacebook上で繋がりのある友人がSpotifyを利用してどんな曲を聞いているかなどの情報をアプリ上で確認可能になるなど、ますますFacebookとSpotifyのサービスの統合が進んでいます。 プラットフォームとの統合だけでグロースハックを実現できる訳ではない SpotifyがFacebookサービスに組み込まれ、ユーザー数・有料会員数・売上がバイラルに拡大するグロースハックが実現できたのは、優良なプロダクト・サービスだったからこそです。Spotifyに限らず、このページの事例で取り上げたグロースハック企業は、前提として他社に無い価値を備えた新しいサービスを提供しており、それがプラットフォームに組み込まれることで、短時間で爆発的な成長を実現したという事例です。   例えば、Spotifyが対象とする"オンラインで音楽を聴きたい"ユーザーは、Spotify以外のサービスに対して「高額で聴き放題ではない(AppleのiTunesのように都度購入が必要)」もしくは「無料であるが聴きたい曲が選べない(ネットラジオのようなサービス)」といった不満を抱えており、これら既存の音楽配信サービスが抱える課題を解決したのがSpotifyでした。   またSpotifyでは世界各国でのローカライズも徹底して行われており、世界中でヒットしている有名な楽曲だけでなく各国のローカルで活動するインディーズ音楽まで、幅広く音楽をカバーしている点も他のサービスには無い強みです。 この点で、世界各国にローカライズし、既存のSNSサービスを超えて映画や音楽なども含めたハブ・サービスへ進化したいFacebookと方向性が一致したからこそ、統合・組み込みによるグロースハックが実現できたのだと考えられます。   以上、FacebookやCraigslistといった巨大なプラットフォームに、自社の製品・サービスを統合・組み込むことでグロースハックを実現した事例を紹介しました。 グロースハック関連の記事: そもそもグロースハックとは何か?~本場アメリカにおける定義と事例~ EXIDEAでは、このようなグロースハックを実現する仲間を募集しています。 ご興味のある方はぜひ弊社の求人情報もご確認ください! グロースハッカー求人情報 ...

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9/8(土)開催!Googleコアアルゴリズムアップデート分析・対策セミナー

2018年8月初旬、Googleの公式Twitterアカウントにて「コアアルゴリズムアップデート」が発表されました。 各順位計測ツールでも世界的に大きな変動が確認でき、実際に弊社で運営をしている多くのWebサイトでも順位変動が起きました。 10年以上SEOを研究してきていますが、ここまで大きな変動は久しぶりです。 今回の変動を受けて大きなダメージを負ってしまった企業様もかなりの数いらっしゃるかと思います。連日、私のもとにも「何をしたらいいのか?」という相談が来ます。 弊社ではクライアントサイトも含めると常時100サイト以上の分析を行っており、今回のアップデートに関しても傾向が掴めてきています。 当社が運営している美容系のWebサイトもここ5年では初めて影響を受けましたが、この傾向であれば美容健康系が中心にダメージを受けてしまうのは仕方ないかなという印象です。 今回はセミナーという形で分析結果と対策方法に関して説明したいと思っています。 「コアアルゴリズムアップデートにより大きな影響を受けてしまったが、どう対策をしていけばよいのかわからない・・・。」という場合には参加をしていただけると、今後の方向性が見えてくるはずです。   2018年8月Googleコアアルゴリズムアップデートセミナー内容 15時~16時:2018年Googleコアアルゴリズムアップデートの分析と対策 世界の著名SEO情報サイトと自社運営サイトの分析からわかる2018年コアアルゴリズムアップデートの特徴 順位が大幅にダウンしてしまった場合にまずチェックすべきポイント 今回のアップデートの傾向からわかる2018年以降のGoogleのトレンド など スピーカー:小川卓真 EXIDEAの代表取締役社長。2007年にWEBマーケティング企業を共同創業し、SEO対策を中心としたWEBマーケティング施策を1,000サイト以上に対して実施した経験を持つ。 現在Webマーケティングの経験は13年になり、グローバルで勝負をするために2013年EXIDEAを創業。Pubcon,SES,SMX等の海外カンファレンスに毎年参加し、常に最先端のWEBマーケティング技術を追求している。   16時~17時:質疑応答 セミナー終了後に1時間程度の質疑応答の時間を設けております。   17時~:懇親会 17時より懇親会を開きます。お菓子やお飲み物をご用意するので、お気軽にご参加ください。     カンファレンス詳細 日時・場所 日時:2018年9月8日(土)14時半開場 場所:弊社オフィス 〒 104-0032 東京都中央区八丁堀4-2-2 ヒューリック京橋イーストビル7階   対象者 ・今回のアルゴリズム変動で大きなダメージを受けた方 ・アフィリエイトで月間100万円以上の売上を目指している方 ・企業のWEB担当でコンテンツマーケティングに取り組んでいる方 ・提携Webサイトの収益を上げたいASP関係の方 ・SEOの最新情報を求めている方   募集人数 50名様 ※応募多数の場合は抽選とさせて頂きます。   参加費 5000円 ※当日受け付けにてお支払いください。     お申し込みはこちら 2018年8月Googleコアアルゴリズムアップデート分析・対策セミナーへの参加をご希望される場合には、以下よりお申し込みください。 [contact-form-7 id="25711" title="EXIDEAセミナー"] ...

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メールマーケティングによるグロースハック~手法やツール・Hotmailの事例~

全世界でE-mail利用者は37億人。利用者数はいまだに増え続けているとのこと(Radicati Group, Inc./ラディカティグループ調べ)。Facebookのユーザー数が全世界で15億人前後であることを考えると、現時点でもまだメールマーケティングは有効なグロースハック手法の1つであることが分かります。 日本国内においても、総務省の「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」の結果を見ると、10代・20代の若年層ではソーシャルメディア利用者が増えているものの未だメールは主要なコミュニケーション手段の1つであり続けているようです。 加えて、まだ歴史の浅いソーシャルメディアマーケティングと比較して、十分な知見があり、またすでに獲得済みのメールアドレス資産を活用できるメールマーケティングはROI(費用対効果)が高いことが各調査で明らかになっており、グロースハッカーであればメールを活用したグロースハック方法も1つの武器として身に付けておきたいもの。 このページでは、メールマーケティングによるグロースハック事例を紹介するとともに、以下の3つの観点ごろにグロースハックを実現する具体的な施策や方法などを紹介していきます。 ・アドレス数獲得のグロースハック(顧客、ユーザー、見込み客のメールアドレスを急速に獲得する方法) ・開封率のグロースハック(送信するメールの件名を改善するなどして開封率を劇的に高める方法) ・メールからのアクション率・クリック率のグロースハック(メール本文やフォーマットの改善によりクリック数を向上させる方法) 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 メールによるグロースハック事例~Hotmailの場合~ 1996年7月にサービスが開始されたHotmailは、GmailやYahoo!メールなどと同様の無料のWEBメールサービスでした。1997年12月にマイクロソフトに買収され、「Windows Live Hotmail」などに名称が変わった後、現在ではマイクロソフトの「Outlook.com」に吸収され、Hotmailという名の付くメールサービスは無くなっています。 当時、シード企業として30万ドル(当時の為替レートで約0.4億円)を資金調達、サービスを開始したHotmailですが、サービス開始から18ヶ月後のMicrosoftへの売却額は4億ドル(約520億円)。このわずか1年半でのHotmailの急速な成長の裏にはグロースハックと呼べる数々の施策がありました。グロースハックの代表事例として取り上げられることも多いHotmailの事例をまずは紹介します。 メールの署名欄を活用したHotmailのグロースハック施策 [caption id="attachment_25510" align="alignright" width="300"] Hotmailの署名欄下に挿入された一文[/caption] Hotmailのサービス開始当初、メールアカウントの開設を促すためのマーケティング手法としてテレビCMやラジオなどに予算を投下して広告宣伝施策を行っていました。当初の1日あたりの新規ユーザー獲得数は200程度(年間7万ユーザーを獲得するペース)。1日に200人のユーザーを獲得できていれば、それだけでも十分な施策と感じますが、Hotmailの投資家には不十分だったようです。 またテレビCMやラジオCMに予算を割いていたものの、実際に獲得したユーザーの80%は「口コミ」でHotmailに登録したことが分かり、従来の広告宣伝マーケティングが効果を発揮していないことも明らかになりました。 そこでHotmailの投資家の1人ティム・ドレイパーがある1つの提案を行いました。 Hotmail経由でやり取りされるすべてのメールのフッター(署名欄の下)に 'PS: I love you. Get your free e-mail at Hotmail' -PS: アイ・ラブ・ユー。Hotmailで無料メールアカウントを開設できるよ。 という1文(リンク)を追加することを提案したのです。 このたった“1行を追加する”という施策が大きなグロースハックに繋がりました。施策が実行に移されると、Hotmail以外のメールユーザーにも署名欄下のフッター部分を通じて、Hotmailサービスの告知が一気に拡大したのです。1日あたりの登録ユーザー数は200から3,000(年間100万ユーザーを獲得するペース)に跳ね上がりました。 アカウントが増えるほどに、さらに“PS: I Love You.”の入ったメールの送信量が増えます。Hotmailの登録ユーザー数はその後も増加し続け、サービス開始から3ヶ月でのメールアカウント数は75万件、6ヶ月で100万件にまで到達しました。最終的には1日あたり2万アカウントが開設され、マイクロソフトへの売却時点では累計850万人以上が登録していたと言われています。当時のインターネットユーザー数が全世界でまだ7,000万人程度だったことを考えると、もの凄く大きな数字であることが分かります。 既存の広告宣伝マーケティング手法にとらわれず、また予算もかけず、自らが持つ資産を徹底的に活用して短期間で圧倒的な事業成長を実現した、まさにグロースハックと呼べる事例です。 グロースハックによりメールマーケティング効果を劇的に改善するには? Hotmailの事例はメールという手段を使った1つのグロースハック事例ですが、サービス内容が「無料のWEBメール」であるためグロースハック事例としてはやや特殊かも知れません。一般的に、メールマーケティングの効果を短期間で圧倒的に高めるためのグロースハック手法としては、以下の3つの観点に分解して考えることができます。 【1】アドレス数を獲得するためのグロースハック メールでアプローチできる顧客やユーザーの数(=アドレスの数)が1万、10万、100万と急速に増加すれば、その分だけメールマーケティングの効果(メール経由での売上など)も劇的に高まります。アドレス数を一気に獲得するためのグロースハック手法には、どんなものがあるでしょうか? 【2】開封率向上のためのグロースハック 送信したメールが開封されなければマーケティング効果は低いものとなります。メールを受信した顧客・ユーザーに「メールの中身を読みたい」と思わせるような件名や、適切な配信時間など、開封率を劇的に高めるグロースハック手法にはどんなものがあるでしょうか? 【3】メール経由のクリック率向上のためのグロースハック メールを開封したユーザーに、意図したアクション(リンクやボタンのクリック、WEBサイトへのアクセスなど)を効率よくしてもらう必要があります。クリック率を圧倒的に向上させるようなメール本文・フォーマットのグロースハック手法にはどんなものが考えられるでしょうか? 【1】アドレス数を獲得するためのグロースハック方法や事例 すでに大量のアドレスを保有していない限り、メールアドレスの獲得・収集はメールマーケティングで最大限の効果を生み出すために欠かせません。このアドレス数を圧倒的に増やすためのグロースハック手法として、アメリカを中心によく活用されている方法をいくつか紹介します。 ●WEBサイト来訪ユーザーにメールアドレス登録を促す仕組みを導入 アメリカの企業サイトやメディアサイトを訪問すると、かなりの頻度でポップアップ画面やスティッキーヘッダーが表示され、メールアドレスの登録などを促す仕組みが導入されていることが分かります。このような形で、来訪ユーザーに必ずメールサービスがあることを認知させることが、アドレス獲得に効果的。また一から開発・実装しなくても、すでに様々なプラグイン・アプリケーション(例えば「SumoMe」など)が提供されており、簡単にWEBサイトへメルマガ購読フォームなどの仕組みを利用できます。 ●登録フォームのA/Bテストによる検証・グロースハック方法 メールアドレスの登録完了率を向上するため、アドレス登録フォームそのものをA/Bテストで検証する方法もグロースハックに欠かせない施策の1つ。前述した「SumoMe」のList Builder(リスト・ビルダー)というサービスは、WEBサイトへ簡単にメールアドレス登録フォームやスティッキーヘッダー/フッターを実装できるほか、複数のパターンを作成してA/Bテストの実施も可能な優れたメールマーケティングツールであり、グロースハックツールです。 ●特別な資料やeBookを制作、ダウンロード時にメールアドレスを獲得する事例 [caption id="attachment_25509" align="alignright" width="300"] 米国オラクル社の資料ダウンロード画面の事例[/caption] 特にBtoBビジネスを行う企業で、潜在的な顧客のメールアドレスを獲得するためのグロースハック方法として有効なのが、特別な資料(ホワイト・ペーパー)やeBookなどのコンテンツを制作、これを無料でダウンロードできるようにするという施策。 内容は業種などによっても異なりますが、その業界にいる人であれば誰もが読みたくなるような冊子(例えば、弊社EXIDEAで言えば「無料!明日からできるグロースハックマニュアル」や「カンタンSEOガイドブック」など)を作成、ファイルをダウンロードするにはメールアドレスの入力を必須とすることで、見込み顧客のメールアドレスを獲得可能です。当然ですが、ダウンロードできる資料の内容が魅力的であるほどマーケティング施策の効果が増すと考えられます。 【2】開封率向上のためのグロースハック方法や事例 メールマーケティングの効果を最大化し、グロースハックを実現するために、配信するEメールの開封率を向上させる方法は最も取り組みやすい方法の1つ。 Eメールの開封率を高めるためには配信時間やメールのタイトル・件名の改善が必要で、またメールアドレスのリストを属性などに応じていくつかのセグメントに分割、各セグメントに合った内容(タイトル・件名)を配信するようなマーケティング手法も、全体の開封率を向上させるのに有効です。 この開封率向上のグロースハックで有名な事例が、オバマ・アメリカ元大統領の選挙戦におけるメールマーケティングです。 アメリカの大統領選挙では、支持率を高めると同時に個人献金を集める目的でもWEBマーケティングが活用されています。有権者にメールアドレスを登録してもらい、選挙期間中、定期的に政策や選挙活動の状況を発信したり、個人献金を依頼するようなメールマーケティングも行われています。 アメリカ大統領選挙でのメールマーケティングによるグロースハック事例 2012年のアメリカ大統領選挙でオバマ陣営はデジタルマーケティング担当者を200名雇用、そのうちの18名がメールマーケティングを担当しました。1回のメール配信でも、異なる件名・本文の組み合わせで18パターンのメールを作成、一部の配信先でテストしてから最も効果が良かったものを残りの全配信先に送信するという手法が取られました。あらゆる施策を小規模でテストしてから実行に移す、というグロースハック手法が採用されていたのです。 最もこのグロースハック手法が効果を発揮した事例が、ある1つのメール配信です。12パターンの件名でテストして配信したところ、最も効果が良かったメールのタイトルと悪かったパターンで何とメールマーケティングの効果(献金額)が約2.5億円も変わる結果となったのです。 メールの件名 想定献金額 I will be outspent.(選挙資金が枯渇しそうです) $2,540,866 (※他に10パターンの件名をテスト) - The one thing the poll got right...

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紹介マーケティングによるグロースハック~DropboxやUberの事例~

製品・サービスを利用しているユーザーが口コミでサービスを紹介、新たなユーザー獲得に繋がるようなバイラルな仕掛けはグロースハック実現のための代表的な手法の1つ。この口コミによるマーケティング効果を、ある意味で意図的に起こそうというのが友人招待プログラムや紹介マーケティング(Referral Marketing)によるグロースハックです。 既存ユーザの友人や知人に製品・サービスを案内してもらう代わりに、キャッシュバックや割引クーポン、あるいは他にユーザーにとって有益なものを提供するマーケティングプログラムを指す、紹介マーケティング。 このようなマーケティング手法を利用した代表的なグロースハック事例として、このページではDropboxやAirbnb、Uberなどの事例を紹介します。これらのグロースハック事例で共通しており、成功の鍵と考えられるのは以下の3点です。 ・紹介・招待に対するインセンティブ・ベネフィットが明確で分かりやすいこと ・紹介者だけでなく紹介された側にもベネフィットがある(=双方向である)こと ・招待方法が簡単でシンプルであること それでは紹介マーケティングによるグロースハック事例を見ていきましょう。 青木 綾(RYO AOKI) EXIDEA米国支社「EXIDEA GLOBAL USA INC.」代表。2002年株式会社リクルートに入社、就職情報サイト「リクナビ」や宿泊予約サイト「じゃらんnet」等のサービス開発やプロデューサー業務に従事。2014年に同社を退職後、アメリカ・カリフォルニア州・ロサンゼルスに移住。現地で日本語情報誌を発行する「Lighthouse」のVice Presidentを経て、2018年より現職。 友人紹介マーケティングによるグロースハック~Dropboxの事例~ 友人紹介・招待プログラムによるグロースハック事例で、最も代表的なのがDropbox(ドロップボックス)の事例でしょう。日本語版のサービスも提供されているのでご存知の方も多いかも知れませんが、Dropboxの急成長・グロースハックの経緯とあわせて説明します。 Dropbox(ドロップボックス)とは Dropboxはアメリカ・サンフランシスコに本社を置くオンラインストレージ・ファイル共有サービスであり、2017年の売上が11.1億ドル(約1,232億円)、2018年時点で世界180カ国で5億人以上の登録ユーザ(そのうち、有料課金しているユーザーは約1,100万人)を獲得している巨大サービス。 ソフトウェアをインストールし、パソコン上の特定ローカルフォルダにファイルを保存するだけでインターネットを通じて他人と簡単にファイルを共有でき、他人がファイルを編集した場合も自動的に同期されるので常に最新状態のファイルを複数人で共有できる便利なサービスです。 また共有ファイルはDropboxのWEBサイト(オンラインストレージ)上でも閲覧可能と、ファイルの共有やメールで送信しづらい大容量のファイルの受け渡し手段として、個人利用はもちろん、企業単位で導入・ビジネスでも活用されています。 100億ドル(約1兆1,100億円)の企業価値があると評価されていましたが、2018年にアメリカ・NASDAQ証券取引所での新規株式公開(IPO)を果たしたことでもニュースになりました。 Dropboxの登録ユーザー数の推移データ 登録ユーザー数の推移データを確認すると、直近では1年に1億人もの新規ユーザー獲得を実現したDropbox。サービス開始初期にはGoogle Adwordsなどの有料マーケティングによってユーザー獲得を試みた時期もあったそうですがROIが悪く、それ以降は有料の広告・宣伝マーケティングに頼らずに、新規のユーザー獲得を実現しています。 2008年9月 登録ユーザー数10万人 ※サービス開始 2009年12月 登録ユーザー数400万人 ※サービス開始から15ヵ月で40倍 2012年11月 登録ユーザー数1億人 2013年11月 登録ユーザー数2億人 2014年5月 登録ユーザー数3億人 2015年6月 登録ユーザー数4億人 2018年2月 登録ユーザー数5億人 ※うち有料会員は約1,100万人 インターネット上のファイル共有サービス・Dropboxのビジネスモデル 創業者であり、当時マサチューセッツ工科大学(MIT)の学生であったドリュー・ヒューストンとアラシュ・フェルドーシは、「Throw away your USB drive!(USBドライブはもう不要だ!)」という考えのもと、インターネット上でファイルを保存・共有できるDropboxを立ち上げました。誰でも無料で利用できる、いわゆる「フリーミアム」モデルのサービスで、Dropboxにユーザー登録するだけで2GBのオンラインストレージを利用できます。 この2GBのストレージで不足する場合、月額料金$9.99を支払うと1TB(1,000GB)のオンラインストレージを利用可能な有料会員となります。また会社・法人単位での導入では、個別のニーズに合わせたストレージサイズや料金のカスタマイズにも対応しています。 無料でサービス利用ができる会員制度と、有料会員化によるマネタイズという点では他のフリーミアムモデルのビジネスと大きな違いはありませんが、無料会員の新規獲得の部分にDropboxのグロースハックが隠されています。 顧客が顧客を呼ぶという考え方~「友人紹介」によるグロースハック事例 創業者の1人、ドリュー・ヒューストンによるとDropboxは「友人を招待すると、無料でオンラインストレージの追加容量をプレゼントする」というマーケティング施策によって、ユーザー登録が60%以上伸びたと明かしています。それほどまでにDropboxのユーザー獲得の原動力となったグロースハック事例が「友人紹介」制度。 これはDropboxに友人を招待、招待された友人がDropboxにユーザー登録し、ソフトウェアをダウンロード、インストールする度に、招待者と招待された友人の双方に500MBの追加容量をDropboxがプレゼントするという内容。1ユーザーあたり最大32名の招待で16GBまでの追加容量を無料獲得することが可能というマーケティング施策です。 有料会員にならなくても、努力によってストレージ容量を増やせるという考え方(ストレージ容量が不足したら、友人にDropboxを紹介すれば良い)を導入、無料会員のままでも自分の努力次第でサービス内容をアップグレードできるようにした点が、Dropboxの最大のグロースハックと考えられます。一見すると有料会員化の弊害ともなりそうな「友人紹介」プログラムが、顧客(ユーザー)が顧客(ユーザー)を呼ぶ、半永久的なマーケティングエンジンとなった事例です。 双方向のマーケティング施策である点も重要なポイント また“双方向の招待”(紹介者と紹介された友人の双方にプレゼント)施策であった点も重要なポイントで、招待された友人からすると自らDropboxにユーザー登録するよりも、「招待を受けてからユーザー登録したほうが得する」ことを実際に体験できます。このため、積極的に自分も仲の良い友人・家族に紹介したくなるのです。 Dropboxの容量が不足してきたら友人を紹介、またさらにサービスを使い込んで容量が不足したら友人を紹介するということを繰り返す度に、サービスへのエンゲージメントが深まるほか、有料会員化する可能性も高まります。つまり、「友人紹介」マーケティングは新規ユーザー獲得のためのグロースハック施策のみならず、ユーザーエンゲージメントを高め有料会員化を促すためのグロースハック施策としても機能した事例とも言えます。 無料会員のまま追加容量を増やす方法や機能が他にも Dropboxは友人紹介マーケティング以外にも、さまざまな形で追加容量を無料でプレゼントする方法や機能を用意しており、これらのマーケティング施策もユーザー本人のエンゲージメントを高めたり、Dropboxの認知・ユーザー獲得を推進するためのグロースハック事例の1つです。 例えば、以下の項目のうち5つを完了すると無料会員でも250MBの追加ストレージを獲得可能としています。 Dropboxのオンライン案内ツアーを開始する パソコンにDropboxをインストールする Dropboxフォルダにファイルを保存してみる 別のコンピュータにもDropboxをインストールする 友人や知人、同僚と1つのフォルダを共有してみる Dropboxに友人を1人招待する モバイルデバイスにDropboxをインストールする 「インセンティブ(=追加容量)を設定、登録するだけでなく実際にサービスを利用してもらう」ための施策は、登録直後のユーザーをよりアクティブな状態に保つのに有効なグロースハック施策と考えられます。 またFacebookでシェアをする、Twitterアカウントと接続するなど、ユーザーが持つソーシャルメディアのアカウントとDropboxを連携させることでも追加容量をプレゼント、ソーシャルメディア上でもDropboxの情報が拡散するような仕掛けもありました。(現在、このグロースハック施策は休止されているようです) このようにストレージの追加容量というDropboxがすでに持っている“資産”をインセンティブとして活用、広告宣伝などのマーケティングに費用・キャッシュを使うことなく大規模なユーザー獲得に成功している事例は、特に資金が十分でないことも多いベンチャー企業のグロースハックで重要な考え方。またDropboxはグロースハックの好事例としてさまざまなメディアでも取り上げられています。 Airbnb・Uberの急成長を支える招待プログラムによるユーザー獲得事例 AirbnbやUberの急拡大も、Dropboxの友人紹介マーケティングと似たインセンティブ制度によって支えられています。顧客(ユーザー)による顧客(ユーザー)招待プログラムは、グロースハックの1つの手法として確立されつつあるようです。 Airbnb(エアビーアンドビー)のグロースハック事例 宿泊予約サービスを運営するAirbnb(エアビーアンドビー)もアメリカ・サンフランシスコに本社を置く会社で、2017年の売上が26億ドル、2018年時点で掲載されている宿泊施設数は全世界で400万軒、全世界で1億5,000万人以上のユーザーがいるとされているほか、これまでの延べ宿泊件数が3億件に達したことが公表されています。 Airbnbの宿泊件数データの推移 2016年に累計1億件を突破、またすでに2018年時点で累計3億件に達していることから、直近では1年間で1億件以上の宿泊がAirbnbを通してなされていることが公開データから推測できます。そして、このAirbnbのユーザー獲得の一部は、Dropboxの事例と似た友人紹介マーケティングを活用したグロースハックに支えられているのです。 2009年 サービス開始・21,000件 2010年 140,000件 2011年 800,000件 2012年 3,000,000件 2013年 6,000,000件 2014年 16,000,000件 2015年 40,000,000件 2016年 80,000,000件(累計1億件を突破) 友人紹介マーケティングを活用したAirbnbのグロースハック施策 Airbnbの紹介プログラムは、ユーザーが自分の友人を紹介し、その友人がAirbnbを使って最初の宿泊を完了すると招待したユーザーと招待された友人の双方に$25のクレジット(割引コード)を提供するというマーケティング施策。AirbnbのWEBサイトだけでなく、AirbnbのiOSアプリやAndoroidアプリからも簡単に友人を招待できるよう、サービスに組み込まれています。 Airbnbのグロースハック施策が強力に効果を発揮している理由の1つが、この友人紹介マーケティングの効果モニタリングやA/Bテストを徹底、継続的に行っている点。Airbnbではユーザー1人あたりの友人招待数をモニタリング、これを増やすためにA/Bテストを活用したり、招待された友人の宿泊予約率(招待メールからのCVR)を高めるためのリマインダー機能を追加開発するなど、継続的にグロースハックに取り組んでいます。 結果的に、ある特定のセグメントではこの紹介マーケティングの活用で25%以上、宿泊予約が増加、グロースハックを実現している事例です。 Uber(ウーバー)のグロースハック事例 自動車配車サービス・Uber(ウーバー)の急成長もまた紹介マーケティングによるグロースハックに支えられています。日本では本格的に普及していないようですが、EXIDEA・米国支社のあるアメリカ・カリフォルニア州には14万8千人の登録ドライバーがおり、ドライバーの直接収入なども含めて400億円もの経済効果を州にもたらしているとのこと。すでにアメリカでの生活において必須のサービスになりつつあります。 Uberの紹介インセンティブとLife Time Value(LTV:顧客生涯価値) Airbnbと同様、Uberの紹介プログラムもまた招待者と招待されて新規に登録したユーザーの双方に$20(約2,200円)分を無料で乗車できるクレジットを提供するという施策。この紹介マーケティングによるユーザー獲得コストは1ユーザーあたり$40(約4,400円)となりますが、UberのLife Time Value(LTV:顧客生涯価値)に着目すると1ユーザーあたりの1ヶ月の平均利用金額は$95(約1万円)。つまり、ユーザー獲得コストを会員獲得後1ヶ月で回収できる極めて優秀なグロースハック事例です。 Uberのサービスが利用しやすく、また生活に根付いていくほど、既存ユーザーにとって$20のクレジットの価値が高まり、自分の友人や家族など関係する人すべてに招待メールを送ろうとする力学が働きます。またこの紹介マーケティングは、新たな乗客ユーザーの獲得だけでなくドライバーの獲得にも繋がっているようです。 招待によりUberのドライバーが増え、よりUberが使いやすいサービスになるほど紹介プログラムの利用が進み、さらに乗客ユーザーもドライバーも増えていくというグロースハックが、今まさにアメリカで起きていると言えます。 BtoBのグロースハックでも紹介マーケティングが有効な事例~Heapの場合~ 紹介マーケティングによるグロースハックですが、これはBtoCのユーザー獲得に限った手法ではありません。BtoBの顧客獲得でも紹介マーケティングを活用している事例として、WEBサイト・アプリの分析ツール「Heap Analytics」の事例を紹介します。 顧客のWEBサイトで自社製品・サービスを紹介してもらう仕組み 「Heap Analytics」はWEBサイトやスマートフォンアプリなどでのユーザー行動を統合的に解析・管理できるマーケティングツールで、これ自体もグロースハックに役立つツールの1つ。このツールが対象とする顧客はWEBサイトやスマホアプリを開発・運営する企業、あるいはそのマーケティング・分析担当者で、ビジネスモデルとしてはBtoBビジネスの1つと考えられます。 Dropboxの場合と同様、無料でもサービスを利用できますが、ユーザーの行動データを取得・分析できるのが月間5,000セッションまでとそれ以上のデータ取得を行う場合は有料課金されるフリーミアムモデルのサービスです。 Heap Analyticsはこの部分に紹介マーケティングの仕組みを持ち込み、無料利用中の顧客が自社のWEBサイトにHeap Analyticsのロゴを掲示、Heap Analyticsのサイトへのリンクを設置すると、無料で50,000セッションまでデータを取得できるようになる紹介プログラムを提供しています。 Heap Analyticsからすると、さまざまなWEBサイトに自サービスのバナー・ロゴが掲出され、サービスの認知向上やSEO的な効果、新たな顧客獲得なども期待できる仕組みであるほか、月間50,000セッションの分析・解析を行うようになることで対象の無料会員の中には有料サービスに移行したい、と考えるところも出てきそうです。 このように1つのマーケティング施策で複数の成果を期待できる点は、グロースハック事例に共通した特徴の1つと言えます。 招待プログラムを簡単に実装・利用できるグロースハックツール・ReferralCandy ユーザー向けの招待マーケティングがグロースハックに有効とは分かっても、いざ自分のサービスに実装するとなると難しい部分もあるかも知れません。この招待プログラムを簡単に利用・実装でき、グロースハックを手助けしてくれるのが「ReferralCandy」のようなマーケティングツールです。 日本語版がまだ無いようで、またShopifyやWoo Commerceなどのプラグイン・ECプラットフォーム機能のウィジェットとして実装することを前提としたツールですが、招待プログラムに欠かすことのできない下記のような機能を簡単にWEBサイトへ導入・実装できるグロースハックツールです。 招待者ごとにユニークな招待用URLの発行 招待された友人・知人向けのランディングページの作成 招待されたユーザーによる購入完了後、紹介インセンティブを自動付与・送付する機能 招待プログラムの不正利用(重複利用など)の防止機能 招待プログラムによる効果・売上・CVRなどの検証・モニタリング機能 上記のようにモニタリング機能までをイチから設計・開発しようとすると難易度が高かったり、想定以上のシステムコストがかかる場合も考えられますが、このReferralCandyのようなマーケティングツールを活用すれば月額数千円の利用料金のみで実装可能です。このようなツールを上手く活用してグロースハックを短時間で実現していくことも、またグロースハッカーに欠かせない要件ですね。 以上、友人招待プログラムや紹介マーケティングによるユーザー獲得のグロースハック事例や有用なマーケティングツールを紹介しました。 グロースハック関連の記事: グロースハックとは何か?本場アメリカにおける定義と事例 EXIDEAでは、このようなグロースハックを実現する仲間を募集しています。 ご興味のある方はぜひ弊社の求人情報もご確認ください! グロースハッカー求人情報 ...

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カスタマージャーニーとCRO(コンバージョンレート最適化)

先日参加したDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)イベント参加後のレポートとして、特に印象に残った“カスタマージャーニーを意識したコンテンツ全体の最適化”というテーマについて、詳しく紹介したいと思います。 ※DIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)全体のレポートはこちらをご覧ください。 カンファレンス全体のテーマはCRO(コンバージョンレート最適化)でしたが、このCRO実現のためにはコンテンツ全体を見直し、 個々のカスタマーの状態(=カスタマージャーニー上のステップやフェーズ)に合わせ、最適なコンテンツを提供することがCROに効果的 ということが複数のセッションで強調されていました。 CROというとアクションボタンのA/BテストなどCall-To-Action部分の最適化に目が行きがちだったのですが、言われてみれば確かに各カスタマーの状態に合った魅力的なコンテンツ(物語)を提示することが、コンバージョンレート向上の鍵ともなりそう。 ここではDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)で行われたセッション内容とともに、カスタマージャーニーとCRO(コンバージョンレート最適化)について紹介していきます。 そもそもカスタマージャーニーとは? カスタマージャーニーとは、カスタマーが契約・購入などのアクション(意思決定)に至るまでの過程・プロセスを指します。説明する人によって、ステップ・フェーズの数が若干異なりますが、今回のイベントでは下記の5つのステップ・フェーズで説明するセッションが多かったです。 カスタマー ジャーニー ステップ・フェーズ 定義 #1 Awareness (認知) カスタマーがニーズや課題を認識した段階 #2 Consideration(検討) ニーズを満たす/課題を解決する手法を知り、自分の生活に取り入れることを検討し始めた状態 #3 Preference(選択・比較) 具体的な製品やサービスの候補が現れ、それらを比較している段階 #4 Decision/Purchase(意思決定) 候補となる製品・サービスの中から1つを選択し、契約・購入などのアクションを実行する段階 #5 Loyality/Share(ファン) 実際に製品・サービスを利用して満足し、さらにどの製品・サービスを好きになったり、他人にそのことを伝えている状態 このカスタマージャーニー自体の考え方は目新しいものではありませんが、 ・モバイルデバイスの浸透により、この5つのステップ・フェーズが非常に短期間で実現されるようになった ・技術進化により、Googleは検索ユーザーの“コンテクスト”を(極端に言えば、カスタマージャーニーのどこにいるか?も)理解し始めた といった点が最近の特徴と言われており、この点を理解しながらWEBサイトのコンテンツを作成していくことが必要そうです。 カスタマージャーニーを意識したCRO(コンバージョンレート最適化) こちらはDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)1日目夕方に行われた、Distilled社のRob Ousby氏のKeynoteの内容です。 CRO(コンバージョンレート最適化)を意識してマーケティングに取り組もうとすると、コンバージョンレートの高い集客チャネル(Where)にのみ注目し、そのチャネルへの投資集中により全体のコンバージョンを高めるという戦略をとる会社・組織が多いとのこと。 ただし氏の講演によると、コンバージョンを大きく伸ばすためには「Who(どんなカスタマーに)」「When(いつ)」「What(何を伝えるか)」も含め、カスタマーとのコミュニケーション設計やコンテンツ全体の設計を戦略的に行う必要があるという内容でした。 特にカスタマージャーニーを意識した「When(いつ)」が重要だと言う点が印象に残っています。 それでは、講演内容を抜粋して紹介します。 Whoの定義~どんなカスタマーと接点を持ちたいのか?~ ・求めるカスタマー像(=ペルソナ)の設定は重要 ・複数のペルソナの中での優先順位付けも(本当に欲しいカスタマーは?) ・ただし最も重要なのは、ペルソナ作成前にまずカスタマーについてよく調べること(各種調査や、社内にコールセンターがあればどんなカスタマーが何に困って問い合わせをしてきているのか確認するのも良い方法) ・自社サイト上の行動データなどの分析も重要だが、TwitterなどのSNS上で自社の製品・サービス(あるいは競合の製品・サービス)がどのように口コミ・レビューされているかの確認も重要 →どんなカスタマーと繋がりたいのか、できるだけ具体的にペルソナを設定する Whenの重要性~カスタマージャーニー上のどこにいるのか?~ ・ペルソナ上は同じタイプでも、カスタマーの感情状態は時と場合によって異なる (同じペルソナでも今この瞬間、機嫌の良いカスタマーもいれば、悪いカスタマーもいる) ・同様に、カスタマージャーニー上のどのステップ・フェーズにいるかも異なる (ニーズを認識した段階なのか?あるいはすでに一定期間比較・検討をしている状態か?) ・ペルソナで定義したカスタマーが、カスタマージャーニー上のどこにいるのか、あるいはカスタマーがどの状態の時にアプローチすることが効果的なのかを考え、最適なコンテンツを用意することが有効 ・また、カスタマーの動きやデータから"コンテクスト"を理解する努力も重要 (Googleは検索クエリからコンテクストを理解し始めている) (例)あるユーザーのGoogle上の検索クエリから見えるコンテクスト ・このクエリの流れ(=コンテクスト)から、このユーザーが今どんな状態で、次に何が必要かを理解して、実際に提供することは可能だろうか? ・そもそも1つ目の検索クエリ(「レストラン ロマンチック シアトル」)で、このコンテクスト(レストランでのプロポーズ?→結婚)を理解することは不可能だろうか? 段階 検索クエリ (訳) 最初のクエリ “most romantic restaurant in seattle” レストラン ロマンチック シアトル ↓ “how to choose a diamond ring” ダイヤモンド 指輪 選び方 ↓ “wedding venues” 結婚式場 ↓ “photographers in seattle” シアトル カメラマン ↓ “types of wedding cake” ウェディング ケーキ 種類 ↓ “how to write a grooms speech” 結婚式 スピーチ 書き方 直近のクエリ “fun honeymoon destinations” 新婚旅行 行き先 →Awareness(課題・ニーズを認知したばかり)フェーズのカスタマーにアプローチするのか、Consideration(検討)フェーズのカスタマーにアプローチするのかでコミュニケーションは異なるはず →より“意思決定”に近いフェーズにいるカスタマーに十分アプローチできているか? What=コンテンツ~WhoとWhenを意識したメッセージ~ ・ペルソナ(Who)やコンテクスト、カスタマージャーニー(When)を意識した時、各Who・Whenの組み合わせに対して最適なメッセージは? ・"認知→具体的な検討"、"比較→意思決定"など、カスタマーをカスタマージャーニーの次のステップに動かすためにはどんなメッセージが必要か? →これらWho・When・Whatを戦略的に捉え直すと、Where(どの集客チャネルを使うか)の効果的な判断ができる。 (ペルソナAのユーザーが比較・検討する際、どのメディアを利用するだろうか?など) このKeynoteの最後のスライドは「Start...

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会場の様子

DIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)イベント参加レポート

2010年からアメリカやヨーロッパなどで毎年開催されており、今年で9回目を迎えたDIGITAL GROWTH UNLEASHED(旧コンバージョン・カンファレンス)。例年、40カ国以上の国から延べ数千人の参加者がいる比較的規模の大きなイベントです。昨年まではコンバージョンカンファレンス(Conversion Conference)という名前で開催されていたイベントですが、今年2018年から「DIGITAL GROWTH UNLEASHED」という新しい名称に変わりました。しかしながら、これまでのコンバージョン・カンファレンスと言う名の通り「コンバージョン率の最適化」(Conversion Rate Optimization:CRO)を主なテーマとしたイベントです。...

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